取扱説明書のようなツールも使いながら、対立することがあったら、互いの感情を伝える機会をあえて持つようにする。これは双方の対立をあおるためではなく、関係を修復するためのものです。ですから、相手をリスペクトしながら伝えることが大切です。

 ここまでは「共に仕事をする仲間として、リスペクトできる人しかチームに入れていない」ということが前提となります。では、リスペクトできない人材が配置されてしまった組織では、どうすればいいのでしょうか。辞めてもらうことも、配置転換も難しいのだとすれば、採用時点で合わない人を雇ってしまったことが失敗だったと考えるしかありません。

 私の好きな言葉に「What's done is done(起きたことは起きたこと)」というものがあります。これは、シェークスピアの『マクベス』の中でのセリフです。ここからスタートして、今ある条件の中で、何とかしなければ物事は始まりません。いずれにしても、「人格」は否定せず、「行為」については冷静に意見を伝え、コミュニケーションが阻害されることのないように心掛けましょう。

「上司が嫌い」な部下も
上司を昇格させるように動くべき

 ここからは、部下の立場から上司の見方について考えてみましょう。読者の中にも「上司がどうしても好きになれない」「上司が嫌い」という人は多いかもしれません。嫌いと思うことにフタをする必要はありませんが、そんな人でも部下として、上司に成果を上げさせ、昇格させるように動くべきだと私は考えています。

 上司の成果が上がれば、そのチーム、組織自体も機会を得て、より魅力のある良い仕事ができるようになります。上司に成長の機会を与えることが、自分たちの成長にもつながり、成果を上げることができれば自分たちの昇進にもつながるのです。対立するのではなく、共創するという関係は「上司から部下へ」だけではなく、「部下から上司へ」の方向にも成り立ちます。

 もうひとつ、部下から上司に向けた望ましい態度を考えるために、「評価」についても触れておきます。日本ではまだそれほど浸透していませんが、上司から部下へだけでなく、同僚同士や、部下から上司への360度評価を取り入れる企業が増えてきました。こうした部下から上司への評価、マネジャーへのフィードバックでは忖度しないことが大切です。それが上司の成長につながるからです。