どうすれば忖度なしに上司の評価ができるのでしょうか。例えば、マネジャーに望まれる資質をいくつかの項目に分け、「あてはまる」「あてはまらない」の度合いを段階評価で回答するという手法を採る企業があります。

 グーグルもそうです。自社の人事プロセスや評価などのツールを「re:Work」というサイトで一般公開していて、ここにマネジャーへのフィードバックアンケートも公開されています。

 このアンケートでは上司を「マネージャーとして他の人に推薦できる」「チームに明確な目標を伝えている」「上層部からの重要な情報を随時伝えてくれる」「チームや組織の枠を超えたコラボレーションを効率よく行える」 といった13の項目について、5段階で評価します。アンケートは匿名で実施されます。最後にフリーコメントも任意で追加できますが、ほとんどの評価は選択式のため、言いにくいことを言葉にする必要がなく、より正直な評価が得やすいと言えるでしょう。

グーグル「re:Work」アンケートグーグルが「re:Work」で公開している「マネジャーに関するフィードバックアンケート」の一部  拡大画像表示

 上司への評価が良い方にばかり偏っているのも、チームや上司本人にとってあまりいい兆候とはいえません。きちんと良い評価、悪い評価にバラけている組織の方が、上司が改善点を見つけられる良い組織と言えるでしょう。

 上司の成長につながる「正直な評価」は、組織の「心理的安全性」が成立していることで可能になります。心理的安全性というのは、組織の中の個人が不安や恐怖を感じることなく安心して発言・行動できる状態のことで、グーグル社内のリサーチによって突き止められた、チームのパフォーマンスを決する最重要因子です。

 敵対視するのではなく、一歩引いた位置から俯瞰して、冷静に思っていることを伝えること。人格を否定せず、「こうなってほしい」という理想の姿を伝えること。それによって、上司であっても部下であっても、相手を成長させることになり、自分の働きやすさにもつながるのです。

(クライスアンドカンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)