米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」の注目記事の要点を短時間でまとめ読みできてしまう「WSJ3分解説」。今回は、中国・武漢市発の新型肺炎について、「習近平体制に与える3つの深刻リスク」という観点から取り上げます。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
新型肺炎が中国経済に与える打撃は
2003年のSARS以上?
中国湖北省の武漢市から感染が拡大している新型肺炎。1月28日時点で中国の患者数は4500人を超え、死者数は100人超に達したことが伝えられています。
そしてこの新型肺炎が、習近平国家主席による中国の独裁体制に深刻な三つのリスクをもたらし、権力基盤を揺るがしています。
その一つ目のリスクは、中国経済減速が及ぼす悪影響です。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は、2003年に中国広東省から感染が拡大した重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行時と今回の新型肺炎の影響を比較した記事を配信しています。
●「ウォール・ストリート・ジャーナル」より
>>新型肺炎、中国経済の打撃はSARS以上か
この記事の中でWSJは、「悪いニュース」として「高速鉄道をはじめとする中国の交通インフラが03年のSARS流行時よりもはるかに充実しているため、ウイルスが急拡大していると考えられること」を挙げています。
また、「中国経済も、2000年代の初めに比べてサービスや消費支出への依存度がかなり高くなっている。03年の流行のピーク時には、小売売上高の伸びが前年比で半分ほどに落ち込んだ」という点も指摘。「そのため、中国経済はSARSに見舞われた時よりも無防備だ。当局がいかに迅速に感染拡大を制御できるかが鍵になるだろう」と分析しています。
本連載の過去記事『トランプ&習近平が揃って直面、経済を巡る「不都合な現状」』でも指摘したように、中国共産党による一党独裁体制の正当性は、国内経済の調子によって判断されます。ただでさえ国内総生産(GDP)成長率が6%を割るか否かで大騒ぎしているところでした。そこへさらに今回の新型肺炎問題が国内経済の足を引っ張るとなれば、中国政府に大きな打撃となる可能性大です。
一方、残り二つの深刻リスクとして挙げられるのは、一昔前では考えられなかった、習氏の権力基盤にヒビが入りかねない事態の発生です。しかも、政権中枢と地方政府という「懐」と「足元」が同時に揺らぐような事態が起こっているのです。