論理もデータもあてにならない時代、論理・戦略に基づくアプローチに限界を感じた人たちのあいだで、「知覚」「感性」「直感」などが見直されつつある。そんななか刊行され、各氏がこぞって大絶賛するのが、『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』という書籍だ。

現役の美術教師でもある著者が、中高生向けの「美術」の授業をベースに、「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、「自分なりの答え」を生み出し、それによって「新たな問い」を生み出すという「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説している。700人超の中高生たちを熱狂させ、大人たちもいま最優先で受けたい授業とは――?

どんなアート作品にも「2通りの鑑賞法」があるPhoto: Adobe Stock

アート鑑賞には「2種類のやりとり」がある

前回の記事では、カンディンスキー作《コンポジションⅦ》を鑑賞しながら、この絵が制作されるに至った背景を見てきました。

※参考記事
■20世紀アーティストに学ぶ「無性に惹かれるアウトプット」を生み出す方法
https://diamond.jp/articles/-/233243

それによれば、彼はかつて見たモネの《積みわら》に触発されて、人の心に直接響き、見る人を惹きつけるような絵を追求します。そこで、ヒントになったのが、彼が幼いころから親しんできた「音楽」でした。カンディンスキーは、音を色に置き換え、リズムを形で表現するという着想を得て、「具象物が描かれていない絵」という表現に至ったのです。

Vassily Kandinsky, 1913 - Composition 7.jpgBy Wassily Kandinsky, Public Domain, Link