アートの常識をめぐる5つの質問

これについて実感を伴って考えるため、ひとまず、また簡単なエクササイズをやってみたいと思います。

5つの質問にYES/NOの2択で答えます。あくまで、あなたの主観でかまいません。
選んだら、その「理由」についてもぜひ考えてみてください。

準備はいいですか? それではどうぞ!

(1)アートは美を追求するべきだ → YES/NOその理由は?
(2)作品は作者自身の手でつくられるべきだ → YES/NO その理由は?
(3)すぐれた作品をつくるにはすぐれた技術が必要だ → YES/NO その理由は?
(4)すぐれた作品には手間暇がかけられているべきだ → YES/NO その理由は?
(5)アート作品は「視覚」で味わえるものであるべきだ → YES/NO その理由は?

さっそく、みなさんの考えを聞いてみましょう。
ここまでの授業を受けてきたことで、以前の自分とは異なる答えを選んだという人もいるようですよ。

(1)アートは美を追求するべきだ
【YESと答えた人】

「アートは『美術』、つまり、美を表現する術だから」
「美しくないアートもあるのかもしれないけど、自分的にはやっぱりきれいで心地いいものであってほしい」
「条件つきでYESかな。美の定義は、その地域の伝統や習慣、時代の流行によって変わる。アートは、その地域・時代における美を追求するものだと思う」

【NOと答えた人】
「マティスやピカソの絵は、美しいとはいえないけれど、アートとして認められているから」

(2)作品は作者自身の手でつくられるべきだ
【YESと答えた人】

「その証明として、作品には作者のサインが書かれる」
「もしも他人のものを自分の作品として発表したら、それは盗作か著作権侵害」

【NOと答えた人】
「音楽の場合、作詞家や作曲家が別にいたとしても、発表されるときには歌手の名前で出されるから」
「ほかの人からのアドバイスを受けてつくった作品の場合も、正確には作者自身だけがつくったとはいえない」
「作者と鑑賞者が共に作品をつくっているといえるから」

(3)すぐれた作品をつくるにはすぐれた技術が必要だ
【YESと答えた人】

「上手な絵だけがいいとは思わない。でも、どれだけすぐれた発想があっても、やっぱり技術がないと形にできない。技術を身につけたうえで、その人らしい表現をするのがベストだと思う」
「ピカソも、学生時代は絵画の技術を徹底的に学んだという話を聞いたことがあるから」

【NOと答えた人】
「アートは見た目の美しさや完成度より、考えが大事だと思う」
「子どもが描いた絵だって、その子の親にとってはすぐれたアートといえる」

(4)すぐれた作品には手間暇がかけられているべきだ
【YESと答えた人】

「絵の値段は、大きさで決まることが多いと聞いたことがある。つまり、大きくて制作時間がかかるものほど価値が高いと思う」

【NOと答えた人】
「実際に手を動かす制作時間は短いけれど、考えた時間は長いという作品もあるはずだ」
「書道家の描いた文字やカメラマンの写真などでは、時間がかかっていないけれど、すぐれた作品というのもあると思う」