前述したように、病院では初期の症状の患者にきちんと投薬などの治療をし、サチュレーションなどのきめ細かい管理をする必要があります。それを徹底し、重症化する人を少しでも減らす。そして本当に必要な人に、間違いなく人工呼吸器を使ってもらう。そこから回復できる可能性がわずかであっても、その可能性を設備のキャパシティであきらめさせるなんてしたくない。そのためには、感染の勢いをなんとか抑制することが大前提として欠かせないのです。

 うちの病院では、人工呼吸器やICUのキャパシティがそろそろ限界に近づきつつあります。人工呼吸器はたくさんあったのに、現時点ではあと20基ぐらいしかない。これが尽きたら、後は命の取捨選択をせざるを得ない。倫理委員会で議論して「どの様な患者からは人工呼吸器を外させていただく」と決めなければいけない。そういう時期が、間もなく来る可能性を覚悟しています。うちの病院だけでなく、州全体でも全受け入れ能力の8割程度に達していると思います。

 隣のニューヨーク州では、すでに命を選ぶ状態になっています。ニューヨークの新型コロナ患者を受け入れ可能な病床数は、合計5万3000床、うちICU 3000床(州の人口は約2000万人)あります。それがほぼ埋まって、人工呼吸器も枯渇しそうになっています。一方で東京都は700床(都の人口は約1400万人)程度しかない。これでは全く足りません。重症患者が少ない今のうちに、受け入れ能力を引き上げておくのがいいと思います。

ERの医師は高いリスクを抱えている

――感染症の専門家という視点で、新型コロナのウイルスについてどんなことが言えますか。

斎藤医師が着けているマスクは、何度も滅菌して使われている。患者の爆発的増加で、医療用品も逼迫しているのだ 写真提供=斎藤孝氏

 まず、毒性が極めて強い。このウイルスに対して人間の免疫能力が強く反応し、多臓器にダメージが生じる「サイトカインストーム」が起きます。肺が最初にやられますが、腎臓などにもダメージが出て、ショック状態に陥り、最後は心肺停止で亡くなります。

 そんな毒性の強いウイルスが、鼻水や唾液の中にものすごくたくさん入っている。その数たるや、インフルエンザの何倍もあるといわれている。話すだけで辺りにウイルスがまき散らされます。ましてやくしゃみなんてしたら、ものすごい量の飛沫をまき散らします。それが空気中に3時間程は漂っているという研究結果がある。

 ですから私たちは患者が入室したら、空気感染が起こると考えて行動します。そのためにN95という高い規格を満たすマスクで防御することが重要なのです。ところがそれが今、全然足りていません。私は同じマスクをもう1週間ぐらい使っています。洗ったり、アルコールで消毒したり、紫外線を当てて滅菌したりして、使い続けています。

――本当に滅菌できていますか。安全ですか。