経営チームに複数事業を回すケイパビリティが備わっているか

朝倉:次に2つ目のポイントの「経営チームのケイパビリティ」について。今までずっとシングルプロダクトを扱ってきた経営チームが、新たに複数のプロダクトを扱おうとすると、従来とはやることが変わってくるということはまず念頭に置いておいたほうがいいでしょうね。

小林:一番大きいのは、CEOの時間の使い方です。今まではCEO含め経営幹部全員が最前線で営業、開発、マーケティングを行うなど、自らが執行の核を担ってきたのだとしたら、そうした時間が1/2になってもこれまで通りの既存事業の成長が実現できるのかどうか。

かつ、それぞれの事業はそれなりに独自性がある以上、違う思考回路を使いながらそれぞれに対応することができるのか、まず検討したほうがいいでしょう。

村上:逆に言えば、既存事業が自走していてCEOがそこに全く時間を費やしていない、経営幹部の数も十分に確保できている。という状態だとCEOは新規事業に集中することが出来るでしょう。

朝倉:シングルプロダクトを扱っている会社でも、それぞれに状況は異なるということですね。CEOがプロダクトマネージャーとしてUIの細部までマイクロマネジメントしている会社もあれば、自身は大局的なところに時間を使っている会社もあります。CEOごとに時間の使い方が異なるでしょう。

事業を複線化しようとする段階で、そもそも今までCEOや経営チームがどのような働き方をしていたかを点検することは重要なポイントでしょうね。

小林:既存事業の運営が細かい点までCEOに依存するスタイルが確立していたとしたら、CEOに対する1事業あたりのインプットが減っていったとしても同じ精度の意思決定を維持できるのかについて、考えてみるべきでしょう。場合によっては、事業全体の意思決定の精度が下がってしまいかねません。

村上:「既存事業は権限委譲ができているので、新たな事業を始めます」という場合であっても、既存事業の雲行きが怪しくなった際にも権限移譲し続けられる状態なのかを確認すると良いと思います。

うまくいかなくなったらCEO自らが出て行かなくては、と思うのだとしたら、それはリソースが足りていないということの裏返しかもしれません。