問題の根っこは
アップルとグーグルにある

――なぜ、こんな残念なアプリになってしまったのでしょう?

 問題はアップルとグーグルにあります。彼らは長らく、ヨーロッパで個人情報保護の問題でたたかれ続けてきました。ですから、新型コロナという未曽有の危機においても、まず個人情報を守ることを最優先の仕組みを作り上げました。

 そう言うと良いことのように聞こえますが、本当にコロナを防げるものなのか、サービス開発の企画段階でユーザーに使ってもらえるのかというデザイン的発想が必要でした。故スティーブ・ジョブズが聞いたら嘆くでしょう。

 両社が開発した仕組みは技術的に言えば極めて画期的です。中央サーバーに大切な個人情報は預けず、すべてはエッジ(端末)に記録されます。クラウド全盛の時代に、あえてクラウドを使わないという逆転の発想です。

新型コロナウイルス接触確認アプリについて厚生労働省発表のリポート「新型コロナウイルス接触確認アプリについて」より 拡大画像表示

――完成前に無用の長物であることが判明した、と。

 そうです。ただ、それでもこのアプリへの取り組みは続けるべきだと考えています。

 現在、日本はGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のくびきにとらわれています。クラウドと携帯OSというITの要を米国の巨大IT企業が握っているのです。

 このアップルとグーグルが、接触確認アプリではクラウドを使わない革新的な仕組みを提示しました。携帯OSを握られていることは変わりませんが、クラウドの支配からは脱するヒントとなるかもしれない。そのノウハウを得るために、きちんと先端的アプリの開発に取り組む必要があるでしょう。

 今回のコロナ対策としては期待できませんが、日本のデジタル産業という、より長期的な経済問題を考えたときには重要な課題です。