お金の教育は中学生から始めるべき
出口 ただ、僕はそれを大学生に教えるのでは、もう遅いと思っているのです。なぜなら、日本の大学進学率は50%ちょっとですから、2人に1人は高校を卒業して社会人になるわけです。そうしたら、社会で生きていくのに必要な知識を持たなければなりません。選挙、お金、社会保障などについては、中学生、高校生のうちから徹底的に教えないとダメだと思います。
奥野 ただ、特にお金に関して私の印象を申し上げますと、学校の先生は投資に対してネガティブなイメージが強いですね。恐らく99.9%の先生が、売ったり買ったりをバタバタ繰り返すのが投資だと思っています。私に言わせれば、それは「投資」ではなく「投機」です。ギャンブルと何ら変わりません。私が考える「投資」は、もっと長期的で、ビジネスの本質に関わるものです。優良企業を見極めて育てていくことは、社会的に意義のある行いです。きちんと聞いていただければ、長期投資とトレードの違いは分かると思うのですが。その壁をどうすれば崩せるのかを毎日考えています。
出口 日本は教育の現場で本当に大事なことを教えていません。18歳になれば選挙権があるのだから、選挙とは何かを教える。社会人になったら自分でお金を稼ぎ、それを自分にとって有益なものに使うのですから、お金の使い方を教える。先ほど奥野さんがおっしゃいましたが、お金を使うのはまさに投資です。性教育の問題も同じですが、いずれも人間が生きていくうえで必要な基礎知識です。それを教えず、綺麗ごとばかりを教えている。これは社会にとって一番の害悪です。これらのことは、近著の『「教える」ということ』に詳しく書きました。
奥野 本来、教養も含め人として生きていくうえで必要な基礎知識は、親が子どもに教えるべきものだと思うのですが、ことお金の話になると親も学んだことがないから、子どもに上手く伝えられません。しかし、貧困は連鎖するということを忘れてはいけない。昭和の時代は人口も経済も右肩上がりで、ただがむしゃらに働いていれば人々は豊かになれました。ところがこれからの時代は、確実に人口が減っていき、経済も簡単には上向かなくなります。子どもたちがお金の使い方を学ばないと、「失われた30年」が40年、50年になる恐れさえあると思います。
出口 どんな社会でも希望は次の世代ですからね。今の時代に生きている人の価値は、次の世代にバトンを渡すことにあります。今の中学生、高校生が社会に出た時に、愚かなお金の使い方をしないように、投資の概念をしっかり伝えていくことはとても大切です。
参考記事
「小さい丸より大きい三角」を目指せ