年間100回以上、受講者数3万人を教えてきた企業研修や講演の中から、リーダーの悩みをピックアップ。内容によっては、「本当にこんなことが起きているの?」「ウチの会社ではこんなレベルの低いことは起きていないよ」と思うこともあるかもしれません。しかし、これらはすべて、実際に現場のリーダーが抱えている問題なのです。
自分の意識を変えるのでさえ難しいのですから、部下の意識を変えさせるのはもっと難しいもの。そこで、新刊『どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』から、シーン別にNG行動・発言とOK行動・発言を対比させながらどのような言動で接したらいいかを紹介していきます。
リーダーの不正解:やんわり言う
リーダーの正解:きちんと叱る
プレイングマネジャーとして結果を出せていないとき、自分の事はさておいて部下を叱っていいか迷うところです。
リーダーAさんは部下を叱るときに、非常に控えめにやんわりと伝えます。
「私も言える立場ではないですが、挽回していきましょう」(×)
一見、謙虚なリーダーのように思えますが、「叱る」という機能を果たしていません。
「私も言える立場ではないですが」「こんなことを言っても説得力はないかもしれませんが」といった言葉でやわらかく叱ろうとしていますが、これでは叱る意味がありません。
一方で、別のリーダーBさんは、自分の成績に関係なく、部下をきちんと叱ります。感情を出して怒鳴ったりしないうえに、人によって態度を変えないので、部下からも信頼されています。
…>部下に負けられないという考えは捨てよう
リーダーとしてどちらが正しい姿でしょうか。
Bさんの姿が正しいといえます。Aさんのように自分が結果を出していなければ、部下に対して説得力がないのではないか、自分も結果を出してから言うべきではないかと思う方もいるでしょう。
Aさんのような考えの方は、プレイヤーの仕事とマネジャーの仕事の区別ができておらず、マネジャーとしての仕事がおろそかになっているともいえます。
そのせいでチームの仕事のバランスを崩したり、本来は部下がやるべき仕事をマネジャーが奪っていたりするため、部下のためにもなりません。
基本的に、プレイヤーは「自分で仕事をする人」であり、マネジャーは、「部下の補佐的な役割になり、チームと部下を成長させる人」です。マネジャーとして、この違いをしっかりと認識しておく必要があります。
ハーバード大学のロバート・カッツ教授は、自ら考案した「カッツモデル」において、現場のプレイヤーには「テクニカルスキル(実務スキル)」が求められているのに対し、現場の管理職に大切なのは「ヒューマンスキル(人的スキル)」だと言っています。そもそも、プレイヤーとマネジャーは求められているものが違うのです。
よって、部下より優れていなくてはならない、部下に負けられないという考えは捨てるべきなのです。部下と勝負しようとしてはなりません。そもそも、マネジャーとプレイヤーは役割が違うだけで上下関係ではありません。