新型コロナ禍で混乱するビジネスの現場において、リーダーは何を考え、どう行動すべきか。2020年6月に『どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』(ダイヤモンド社)を出版した、コミュニケーションデザイナーの吉田幸弘氏と、著書『できるリーダーは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)が10万部を突破した、研修トレーナーの伊庭正康氏。企業向け研修などで数多くのリーダーを育成してきた2人の専門家による緊急対談を実施。前編では、リーダーが現在抱えている悩みについて話し合っていただきました。(取材・文/平 行男、撮影/熊谷章)
「働き方改革」はコロナ禍でどうなったか?
――ここ数年、企業にとって大きなテーマとなっている「働き方改革」ですが、現在どれくらい進んでいるのでしょうか? また、新型コロナウイルスの感染拡大はどう影響していますか?
(株)らしさラボ代表取締役
企業研修トレーナー
1969年京都府生まれ。1991年リクルートグループ(求人情報事業)入社。リクルート社においてプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞、また40回以上の社内表彰を受け、営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。リクルート流の「圧倒的な当事者意識」を持つ組織作り、人材育成法を会得。2011年、企業研修を提供する(株)らしさラボを設立。営業リーダー、営業マンのパフォーマンスを飛躍的に向上させるオリジナルの手法(研修+コーチング)が評判を呼び、年間200回にのぼるセッション(研修・コーチング・講演)を自ら行い、そのリピート率は9割を超える。YouTube「研修トレーナー 伊庭正康のビジネスメソッド」も好評。
伊庭正康(以下、伊庭) 私のお客様は大手企業が多いので、ご紹介するケースは大手寄りの話になります。3、4年前まではどの企業でも残業時間が30~40時間あって、それを半分以下に減らすことができています。それでもまだ時短の研修をやりたい、というオーダーが多かったのが昨年あたりまで。大手企業では十分に働き方改革が進んできたという印象です。
新型コロナウイルスが発生してからは様相が変わりました。リモートワーク、テレワークが導入される現場が増え、企業側からは働いている人の状況が見えづらいため、現場の社員はセルフマネジメントが必要になっています。そしてセルフマネジメントのスキルには個人差があるので、きちんと自分の働き方を管理できている人とできていない人の二極化が進んでいます。だから最近私のところに来る研修の依頼は、「オフィスでも自宅でも、自分でできる時間管理」といったテーマが増えています。
吉田幸弘(以下、吉田) 私の取引先は大手企業と中小企業のお客様が半々くらいなので、中小企業のケースをお話しします。中小企業の働き方改革については、形式上は進んでいるけれども、実際は家に持ち帰ってなんとか仕事を終わらせているケースが多いです。中小企業においてはまだまだ働き方改革は浸透していないようです。
そんななかで新型コロナウイルスが発生し、リモートワークを導入することになった企業では、大きな混乱が起きています。オフィスで仕事をするという制約がなくなるために、ひたすら長時間労働をしてしまうケースもあるからです。その結果、肉体的にも精神的にもつらくなる人が増えているようです。
――“隠れ持ち帰り残業”に、現場のリーダーは気づいているのでしょうか?
吉田 気づいているケースもそうでないケースも、いろいろあります。リーダー自身が部下の仕事に介入した結果、部下の労働時間が増えているケースもありますし、業績を上げたいので部下の残業を見て見ぬ振りしているケースもあります。また部下の方にも、やる気があって長時間働いてしまう人と、やる気がなくて仕事が遅い人の2パターンあります。それぞれの状況に合わせて対処する必要があります。