ビジネス界隈で「アート」が注目されるようになって久しいが、その動きはますます加速している。そんななか、12万部を突破したベストセラー『13歳からのアート思考』著者の末永幸歩氏と、アート研究家・起業家で『ハウ・トゥ アート・シンキング』の著者・若宮和男氏によるオンラインイベント「教育とビジネスとアート思考」が開催された。
事前募集で1000名以上の応募が殺到した同イベントは、YouTubeライブで配信され大反響のうちに幕を閉じたという。そこで行われた2人のクロストークの模様を2回の記事でお送りしていく。後編では、自分起点で考えるアート思考を「他者評価」や「組織内運用」とどう両立させていくかをめぐって議論が交わされた(構成/白戸翔)。
▼前編はこちら▼
アートが仕事に役立つ…? そこで生まれる「モヤッと感」の正体(対談前編)
https://diamond.jp/articles/-/246107
自分の「探究の根」を育てる
「水やり」をどうする?
――「根を育てるためには、水をやる作業が大事なのでは?」とコメントが来ています。根を育てることが大事なことはわかったけど、その根はどうすることでエネルギーを得ていけるのか? という質問ですね。
uni'que代表、ランサーズタレント社員、コアバリューファシリテーター
建築士としてキャリアをスタート。その後東京大学にてアート研究者となり、建築・アート論、ニーチェ研究をしつつ、アートイベントを主催。2006年、モバイルインターネットに可能性を感じIT業界に転身。NTTドコモ、DeNAにて複数の新規事業を立ち上げる。2017年、女性主体の事業をつくるスタートアップとしてuni'queを創業。「全員複業」という新しい形で事業を成長させ、東洋経済「すごいベンチャー100」やバンダイナムコアクセラレーターにも選出。ビジネスに限らず、アートや教育など領域を超えて活動。2019年実業之日本社より『ハウ・トゥ・アート・シンキング』を出版。https://note.mu/kazz0
末永幸歩(以下、末永):根を伸ばす作業の期間は、地下の世界なので他の人からは見えません。「あの人一体何やってるんだろう」と言われ、誰からも評価されない期間がずっとあるわけです。しかもいつ花が咲くかもわからないのですから、ビジネスにおいても、教育においても非常に苦しい状態ではありますよね。
それを踏まえた上で大切なのは、「この(自分が育てている)アートという植物の全体像は、こういう姿をしているんだ」というイメージを持っておくことです。それこそ花だけを器用に咲かせている人が周りにいっぱいいて、その人たちを見て「やばい」って焦ってしまうことがあると思うんですけれど、全体像がイメージできていると、自分自身がやっていることを信じる根拠とか指針になるのかなと思っています。その全体像をイメージしながら、「自分はいま何も花は咲いていないけど、根っこを育てている状態だから間違ってはいない」と思えるかが大事です。
若宮和男(以下、若宮):隣の花を見すぎて狂ってしまうとか、そろそろ咲かせなければ!と焦ってしまうと、余計に何がしたいのかわからなくなってしまいますよね。今は評価経済だったりSNSだったり、みんな結構周りを気にしがちなので、末永さんがおっしゃったようなことが本当に大事になってくると思います。
なぜ僕がアートシンキングの本を書いたかというと、先ほどの末永さんの授業のように、アーティストのクリエーションを追体験することで勇気づけられることがあると思ったから、というのが一つあるんです。
アーティストはすごい歪(いびつ)な人も多いんですが、花を見るだけでなくその根を想像してみると「その歪さのまま行くのか!」とか勇気をもらって、自分も歪なままでいいって思えるんですよね。そういったことが根を伸ばしていくエネルギーになると思います。