親がエスカレートすると子どもがトラウマになることも
―― 私がたまに仕事しているカフェで、近くの有名私立幼稚園や小学校にお子さんを通わせている紺色スーツ姿のママさんたちがよくお茶しているんです。自然と耳に入ってくるのは、習いごとの話や噂話、子どもの褒め合いなど。お受験というと、親御さんたちのライバル意識がすごそうなイメージですが……。
諏内 お受験のことで頭がいっぱいになってエスカレートしてしまう親御さんは、確かにいらっしゃいます。その場合、お子様にも悪い影響を与えてしまいます。私の友人にも、中学受験に失敗したときに、親から「恥ずかしくてもう外を歩けない」と言われたことがショックで、大人になってからもずっとトラウマになっている人がいますから。
私がご指導したお母様の中にも、教室で教えている面接用の所作や言葉づかいのルールを、お家の中でもずっとお子様に続けさせている方がいたので、「そこまでする必要はないですよ。お家と他所は違うと、けじめをつけられることが一番大事です」と申し上げたことがあります。
お辞儀、挨拶、立ち方座り方、敬語などを、一番くつろげるはずの家の中でも続けていたら、子どもは息つく暇がありません。実際、親の圧力やプレッシャーから、からだに様々な症状が表れてくるお子様もいますので。
―― まだ小さな子どもが、そんなに追い詰められたらかわいそうですね。
諏内 特に一人っ子のお子様は、親の目が行き届きすぎて過干渉になりやすいんです。
私がお子様に質問している際、横から「ほら、返事」、「背中伸ばして」など、口をはさむお母様が多いので、「ここではすべて私がお子様に指示を出しますのでお母様はご覧になっていてください」とお伝えします。また、講師とお子様だけの個別レッスンも必ずいたします。
―― お母様から離れたお子さんは、どういうふうに変わっていくのでしょうか?
諏内 親子一緒ですと、甘えたり、ふざけたり、恥ずかしがったり、また、間違えて叱られないようにチラチラ顔色を窺うお子様も多いです。そうすると自分の意見が言えず、自分で考えて判断することができなくなります。
でもお母様がいなければ、自分で考えるしかありませんよね。それがとても大事で、自分で考えて自分の言葉で伝える、そしてこれが大きな自信になるように誘導するのが、私の大きな役目だと考えています。
もちろん、ご家庭ですでにそのような教育されているご両親もいらっしゃいます。そういう方は、「余白」をとても大事にしていますね。
子どもが自分で考えて言葉で話せるようになるまで、待ってあげて、見守ってあげるのが「余白」です。面接官からたとえ難しい質問をされても、一生懸命考えて自分のオリジナルの意見を伝えられるのが受かる子の条件のひとつだと私の本にも書きました。そのように育てるためには、親子でも一定の距離を保って、子どもを信じて待ってあげることが大事なのです。