グローバル化の進展に伴い人気が高いグローバル系学部。新型コロナウイルスのまん延によって、海外留学できない事態に陥り、来春の受験者数の動向に注目が集まっている。本特集『コロナで激変!大学 序列・入試』(全14回)の#11では、偏差値が高く難関学部の一つだったグローバル系学部の来春入試の見通しを取材した。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
留学不可で視界不良の
グローバル系学部
今年3月上旬、海外留学のために米国の空港に降り立ったある大学生は、急速にまん延し始めた新型コロナウイルスに翻弄されることとなった。ちょうどWHO(世界保健機関)が、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を宣言した頃だ。
米国に到着後、ホテルで2週間待機している間に留学先の大学が立ち入りを禁止、対面授業を全てオンライン授業に切り替えることを決めた。加えて、日本政府による感染症危険情報のレベル引き上げも予断を許さない状況となり、米国にとどまる理由がなくなった。
「もう日本に帰るしかない」――。
日本に帰国しても、ホテルでの2週間の隔離を余儀なくされた。その後、帰宅時の公共交通機関の利用を禁じられたため、レンタカーを借りてほうほうの体で自宅に帰り着いたという。
渡米が徒労に終わった上、航空代金はおろか、隔離されたホテル代も自腹だった(当時)。さらに感染予防のためにシーツを頻繁に替えたり、消毒したりする手間がかかるなどの理由で、通常よりも高い料金を請求されたという。
「数十万円の費用をかけて無駄に終わったこともつらいですが、もっとつらいのは、今後の見通しが全く立たないことです……」
沈鬱な面持ちで話す大学生の傍らで、この学生を海外留学に送り出した大学教授もまた、同じような表情を浮かべていた。
グローバル化の進展に伴い、多くの大学が国際教養学部などグローバル系学部を設立。人気の高さから偏差値も急上昇し、名実共に看板学部となった。これらグローバル系学部の売りは、短期留学のみならず、1年間の海外留学を必須としていることなどだ。
高等教育の国際展開を進めようとする政府も学生を金銭面で支援し、海外留学者数は2011年の約5万4000人から、18年には約11万5000人と倍増している(上図参照)。
そうした中での今回の新型コロナ騒動は、グローバル系学部にとって大きな痛手となっている。