単なる「優秀な部下」にとどまるか、「参謀」として認められるか――。これは、ビジネスパーソンのキャリアを大きく分けるポイントです。では、トップが「参謀」として評価する基準は何なのか? それを、世界No.1企業であるブリヂストン元CEOの荒川詔四氏にまとめていただいたのが、『参謀の思考法』(ダイヤモンド社)。ご自身が40代で社長の「参謀役」を務め、アメリカ名門企業「ファイアストン」の買収という一大事業に深く関わったほか、タイ法人、ヨーロッパ法人、そして本社CEOとして参謀を求めた経験を踏まえた、超実践的な「参謀論」です。本連載では、本書から抜粋しながら、「参謀」として認められ、キャリアを切り開くうえで、欠かすことのできない「考え方」「スタンス」をお伝えしてまいります。

「剛腕」を振るうリーダーが“ニセ者”である理由Photo: Adobe Stock

「リーダータイプ」と「参謀タイプ」は、本質的に同じことである

「リーダータイプ」か「参謀タイプ」か?

 私は、『参謀の思考法』という本を書きながら、このよくある問題設定を常に意識していましたが、全体を書き上げた結果、「どちらも本質は同じである」という結論に至りました。

 もちろん、リーダーと参謀は果たす役割が異なります。

 リーダーは、意思決定を下し、その実行を統率するとともに、結果責任を引き受ける存在であり、そのリーダーをサポートするのが参謀の役割です。リーダーの最大のフォロワーが参謀だと言ってもいいでしょう。

 しかし、この連載で再三述べてきたように、参謀は、リーダーとは異なる自律性をもち、ときにリーダーを牽制することができなければ、リーダーを守ることができません(詳しくは連載第7回などを参照)。

 そして、参謀が発揮すべき自律性とは、自らの実践と思考を通して、磨き上げた「原理原則」を厳守するところから生まれてきます(「原理原則」の重要性は連載第19回参照)。つまり、自らが自らを律するという意味でのリーダーシップがなければ、参謀の役割を果たすことはできないということです。

 また、参謀は、上司という「機関」を機能させるのが仕事です(連載第5回参照)。

 そのためには、本来、「社会のなかで会社はどのような存在であるべきか」「社会に貢献するためには、会社はどのような機能を果たすべきなのか」「会社のなかで上司はどのような機能を果たすべきなのか」といったイメージを、自分の力で描き出せていなければなりません。

 そして、その全体イメージをもちつつ、上司が正しく「機能」できるように、上司の「先回り」をしながら環境を整えていくことができて、はじめて優れた「参謀」になることができるわけです。上司の指示・命令を待つのではなく、その「先回り」をするうえでも、リーダーシップがなければならないということです。

 つまり、参謀の本質にはリーダーシップがあるということです。