下落局面で分配金利回り10%は欲張り過ぎ
基準価額の推移は定期的に確認しよう

 分配金健全度がマイナス49.9%でワースト1位となったのは「ニッセイ世界リートオープン(毎月決算型)」。直近1年間の騰落率がマイナス27%と低迷する中、分配金を22.4%も出したため、基準価額は5182円から2700円に急落した。

 ワースト2位の「ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)」は、毎月80円の分配金を継続中。足元の基準価額で分配金利回りを計算すると実に29.9%にもなる。リート市場が急騰しない限り、この水準の分配金を永続的に実施するのは難しいだろう。

「投資信託事情」の島田知保発行人はこう解説する。

「基準価額は市場環境にも左右されるので、マイナス幅が数パーセント程度であれば許容範囲内。ですが、2桁以上の分配し過ぎが続くと、基準価額の回復は難しくなります」

 実は直近1年は国内外のリート市場が急落したため、分配金健全度がマイナス20程度になるのは仕方がない。だが、問題は元本部分が減っているにもかかわらず、実力以上の分配金を維持して基準価額の下落に拍車を掛けている投信が目立つことだ。

 国内外のリートを投資対象とする毎月分配型投信は、コロナ危機前までは右肩上がりで価格が推移してきた。そのため元本上昇分と合わせることで、基準価額を維持しながら2桁の利回りを出すことができた。

 本来であれば新型コロナウイルスの感染拡大が直撃して、リート市場が低迷したタイミングで分配金を引き下げる必要があるのだが、ほとんどの投信は機動的な対応ができていない。運用会社は販売のために高い分配金水準をアピールしたいし、個人投資家も高い分配金利回りを要求するからだ。

「東証リート指数の分配金利回りは4%台半ば。市場が横ばい、下落局面で分配金利回りが10%欲しいとなると、元本部分から捻出する元本払戻金(特別分配金)を出すしかありません」(島田氏)

 基準価額が下落しても、その分だけ分配金で受け取ればいいという考え方もあるかもしれない。だが、相場下落時に実力以上の分配金を出すと基準価額が大きく下落するため、相場の回復時の上昇幅も小さくなる。基準価額の回復が難しくなるだけでなく、受け取る分配金総額も減少するリスクが高まるのだ。

 念のため付け加えると、毎月分配型投信は必ずしも「悪者」ではない。複利効果がないので資産形成には向かないが、資産を活用しつつ分配金を受け取る仕組みはシニア層の需要に合っている。ただし、それも適切な商品を選んでこそである。

 基準価額の確認を怠ると、一定額の分配金が出ているので安心していたら、元本が大きく毀損していたというケースもある。購入後も定期的に基準価額を確認する習慣をつけよう。

 また、投信選びでは分配金利回りや運用成績だけでなく、コストも重視する必要がある。保有中に継続的にかかる信託報酬が高いとリターンを押し下げるからだ。本来、リートや債券を投資対象とした投信は、数パーセントの利回りを狙う商品。信託報酬率が1.5%以上と高く、資金流出も多い投信は解約も視野に入れて検討したほうがいいだろう。

【ランキングの見方】
年4回以上決算型の純資産総額上位60本(2020年10月末時点)のファンドが対象。騰落率は分配金再投資で算出。分配金健全度は1年間(19年10月末~20年10月末)の騰落率から、分配金利回りを引いて算出し、低い順に並べた。マイナス幅が大きいほど、基準価額が下落していることになる。信託報酬が1.5%以上、直近1年の資金流入額がマイナスの投資信託は赤文字にしている。トータルリターンは受取分配金を加味した収益。マイナス20%以下は赤文字とした。投信の基準価額等のデータは20年10月末時点。
分配金健全度の計算式は以下の通り。
分配金健全度=1年間の騰落率-分配金利回り
分配金利回りは直近1年間(19年11月~20年10月)の分配金合計額を19年10月末の基準価額で割って算出。
*順位は小数第2位以下を加味している。資金流入額の20年10月分は推計値

データ提供:イボットソン・アソシエイツ・ジャパン

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata