「辛くない努力」の見つけ方

──嫌なことから逃げ続けた結果、現在は漫画を描いて生計を立てていらっしゃるんですよね。つまり、好きなことが仕事になっている。でも、これまでずっと好きだと思っていたものが、「お金を稼ぐ手段」になったとたん、楽しく思えなくなってしまうってこと、すごくよくあると思うんです。やしろさんの場合は、漫画を書くことが嫌になりませんでしたか?

やしろ 結局のところ、仕事にした瞬間に嫌になったんだったら、それって向いてないと思うんですよね。「頑張らなきゃ」と思った時点で、今まで「努力だ」と思っていなかったものが、「辛い努力」に変わったんだとしたら、もしかしたら本当に向いていることじゃないのかもしれない。

 たとえば僕の場合、もう2年くらい毎日漫画を描いてブログを更新していますけど、「努力している」と思ったことないんですよ。だから、知人から「よくそんなに努力できるね」と言われて、「あー、これって努力だったんだ」ってハッとしたんですよね。自分としては好きなことをただやっているだけのつもりだったので、「努力」と言われてびっくりしたというか。

 だから、「これで稼ぐぞ」というフェイズになったときこそ、本当にそれが大好きで、自分に向いているのかどうかわかる瞬間なんじゃないかなと。もし、「辛い努力」に変わってしまったんだとしたら、それこそ「逃げる」コマンドを発動させてみて、別の選択肢を考えてみる、というのもありだと思うんですよ。もしかしたら、実は好きじゃないことなのかもしれない。だったら、他に好きなものってなんだろう? 向いているものってなんだろう? と向き合うチャンスにもなるかもしれない。

 だから僕も、この本のなかで逃げろ逃げろ、って言いまくってますけど、ただ逃げ続けて現実逃避することを推奨しているわけじゃなくて。嫌なことがあるならずっと寝てりゃーいいよ! ゲームしてればいいよ! なんとかなるっしょ! という話ではない。

 ただ、向いていないことから逃げつつも、自分に向いていることを探す努力はする。「逃げる」コマンドを持つことで、「自分に何が向いているか」を調査する思考回路になっているんだと思います。

「自分には何が向いているんだろう?」と思う人に“突然月収500万”になった僕が伝えたいこと

「努力の貯金」ができてさえいれば

──「自分だけの才能」は、どうしたら見つかると思いますか?

やしろ 自分が本当に好きなことを探すのって、人生の課題のひとつだと思うんですよ。それって結局、自分の「才能」を探すことにもつながると思うんです。ふつうの人がやってて嫌いなことをずっと続けられるって、才能ですよね。だからたとえば、会社員をずっと楽しく続けている、それも才能だと思います。

 今は、「フリーランスって自由そうでいいね」とか、「会社を辞めて独立するべき!」とかよく言われてますけど、みんながみんなフリーランスに向いてるわけないじゃないですか。自分は組織で働く、会社員としての才能があるのに、他人のアドバイスに左右されて、フリーランスになって失敗したらもったいないですよね。

 結局のところ、すべては向き不向きでできていると思っています。それを見つけるために、いろいろやってくのが人生じゃないかなと。最終的に自分が、これは超楽しいっていうのを見つけてから、そこをゴールに設定して進んでいく。

 ただ、大事なのは、苦手なものから逃げたとしても、「自分に何が向いているか」を見つける努力は怠らないこと。何が向いているかを探すそれぞれの局面で「努力の貯金」ができていれば、それを応用しながら、また好きで夢中になれる新しいことにチャレンジしても、うまくやっていけるかもしれない。今やっていることが楽しくなくなったとしても、別の可能性を広げることができますよね。

「逃げる」コマンドを表示させる生き方というのは、結局、「いつでも逃げられるようにリスクヘッジしておく」ということなんですよ。今立っている場所が危なくなっても、自分にはまだこれがあるから大丈夫。そうやって、常に自分の人生の選択肢を増やしていく。僕だって、いつまでも今の生活が続けられるかはわかりません。でも、いざピンチになったときに「ヤバい!」とならないように、工夫しているわけです。まあでも、たとえばTwitterが突然サービス終了とかしたら、確実に泣きますけどね。

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