鬼ヶ島から財宝を持ち帰った桃太郎を待っていたのは、毎年の確定申告でした。果たしてこの財宝はどう申告したらいいのか、鬼退治に使った「きびだんご」は経費として認められるのか――。
そんな疑問にこたえる新著『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』では、知らないと損をする、でも説明されてもわかりにくい。そんな税金の世界を、誰もが知ってる昔ばなしでシミュレーション。ストーリー仕立てで楽しみながら、税金の知識が身につくと早速評判になっています。
こちらの連載では、本文の中からご紹介していきます。今回は、「桃太郎」の2回目になります。(イラスト・佐々木一澄)

「桃太郎」の1回目はこちらになります。

奪い返した財宝は「所得」になるのか?

おばあさん この子は村人のためを思って、鬼を成敗しただけなんです。それなのに、税金まで持っていかれるかと思うと不安で不安で……。うちはおじいさんの柴刈りしか収入がないんですよ? それなのに財宝まで持っていかれては……先生、どうにかなりませんか?

高橋税理士(以下「高橋」) あー、そういうことですか。それはですね……。

アシスタント小沢くん(以下「小沢」) すいません!ちょっといいですか。

高橋 あ、はい。

小沢 僕、前々から気になってたんですよ。『桃太郎』のお話って、桃太郎が鬼ヶ島から財宝を持って帰るところで終わっていますよね。「幸せに暮らしましたとさ」って。

おばあさん そうですね。

小沢 あの財宝、おじいさんとおばあさんの家にあったものだけじゃないですよね?

おばあさん ……と言いますと?

小沢 村人みんなから奪った財宝も、あの中に含まれてないですか? もっと言うと、鬼は他の村も襲ってたのかもしれませんよね? それなのに、おじいさんおばあさんが財宝を独り占めするのって、なんかおかしくない? って。

高橋 なるほどね。他人の財産まで自分のものにしている、と。

小沢 あと、結局桃太郎たちも力ずくで宝を奪い返してますよね。話し合いなんて全然しないし。「暴力で宝を奪う」って意味では、鬼たちと同じ罪を犯してるんじゃないかって思うんですよ。桃太郎さん、そこのところどうなんですか!?

桃太郎 ……。

おばあさん そうおっしゃいますけど、この子が鬼を倒さなかったら、もっと被害者が出たかもしれないんですよ? それをこちらは、自腹できびだんごも刀も用意して、命まで危険にさらして……。むしろ感謝してほしいくらいです。

小沢 当然の報酬だってことですか。

おばあさん 当たり前です。

小沢 報酬ってことは、やっぱり「儲け」なんじゃないですか? そりゃぁ税金を取られても仕方ないのでは!?

おばあさん それとこれとは話が違います!

高橋 まぁまぁまぁ、2人とも落ち着いて。

桃太郎 ……!

高橋 君は刀から手を離そうね。危ないから。ね? ね?

小沢 先生、この財宝、どう考えたらいいんですか? 暴力で奪い返したとはいえ、やっぱり儲けなんだから、税金がかかりますよね?

おばあさん もともと私たち人間の財宝なんですから、税金なんてかかりませんよね?

高橋 わかりました、わかりました。では、結論から申し上げます!

全員 ……。 

高橋 結論! 税金がかかります!

全員 !

高橋 税金の世界では、特に非課税のルールがない限り、たとえ違法でも「得したら」課税の対象になるんです。

税金の世界では違法か合法かは関係ない!?

小沢 ……ん? いま「たとえ違法でも」って言いました?

高橋 言った。国税庁からの通達に「所得税基本通達」というのがあってね。その第36条のところにこう書いてあるんだよ。

 法第36条《収入金額》関係

36-1 法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない

高橋 おばあさん、ここ見てください。はっきり「適法であるかどうかを問わない」ってあるでしょう?

おばあさん 書いてありますね……。

高橋 罪を罰するのはあくまで警察の仕事。税金の世界では、きっちり課税することを重視しているので、収入を生み出した行為が違法か合法かなんて関係ないのです。

小沢 じゃぁオレオレ詐欺でだまし取ったお金なんかも?

高橋 理論上は課税対象になる。まぁ、そんなお金、真面目に確定申告なんてしないだろうけど。

小沢 税金を取るためなら儲かった手段を選ばない……。ものすごくドライですね。

高橋 つまり今回の場合、鬼が違法な手段で集めた財宝を、桃太郎さんが違法な手段で奪い返して独り占めしても、桃太郎さんの手元に利益が残ったのなら課税対象。所得税がかかります。

小沢 ですって!

(次回へ続く)