2018年2月の発売以降“小論文のバイブル”としてジワジワ広がり、小論文対策本として異例の現在7万8500部を記録している『落とされない小論文』。ニッチなジャンルの本だとも言えるこの本がこれだけ広まっている背景には、そもそも「小論文の書き方」をしっかり習った人がいないからではないかという仮説が私の中にあった。「自分の考えを伝える」ことが重視される現代にあって、日本の教育はそれに伴っているのか否か、小論文指導のスペシャリストである今道琢也さんに意見を聞いた。(取材・構成/イイダテツヤ)

小論文試験が問うている「力」とは何か?

──ずいぶん前から、大学入試はもちろん、公務員試験や教員採用試験、最近は企業内の昇進試験でも盛んに小論文が取り入れられていると聞きます。そもそも、なぜ試験に小論文があるのでしょうか?

今道琢也(以下、今道):1つは、受験生の多様な力を見るという目的があります。小論文を導入することで、「決まった正解を答えること」以外の力をはかることができます。

 文章は、その人の知性や思考力が如実に出ますから、一週間くらいで付け焼き刃的になんとかしようと思っても、なかなかそうはいきません。「積み重ねがどうしても出てしまう」という意味で、試験としての機能を果たしていると言えるでしょうね。

──基本的に「出題者側」は、受験者の何を見たいと思っているんでしょうか?

今道:目的は多岐にわたると思います。思考のプロセスや、文章表現力はもちろん、「出題に対して正面からきちんと答えているか」というある種の注意力を見ている部分もあるでしょうし、教員試験や医療系の試験の場合は「その職業に対する適性を見たい」ということもあるでしょう。

 ただ、全体的に共通するのは、文章から判断できる「思考の深さ」であったり「視野の広さ」、「そのテーマに対する関心の高さ」です。ですから、日頃からそれぞれのテーマについて関心を持って深く考えていることが、小論文を書く力の上達に直結すると思います。

──でも、小論文対策っていうと、「句読点の打ち方」とか「起承転結の組み立て方」というような、細かいスキルを教えるイメージがあります。

今道:そうなんです。句読点の打ち方も、起承転結も、原稿用紙の使い方だって、もちろん大事です。でも、繰り返しますが「付け焼き刃でなんとかならない」からこそ小論文という試験があるわけです。少なくとも出題者側は「付け焼き刃の力」を見たいわけではありませんから、細かいスキルから学ぼうとするのは順番が違います。

今道琢也(いまみち・たくや)
1975年大分県生まれ。インターネット上の小論文指導塾「ウェブ小論文塾」代表。京都大学文学部国語学国文学科卒。元NHKアナウンサー。高校時代、独学で小論文の書き方をマスターし、現役時に大阪大学文学部、翌年の再受験で京都大学文学部、慶應義塾大学文学部、就職試験ではNHKの試験を突破(すべて論文試験あり)。NHK在職中に編成局長特賞、放送局長賞などを受賞。2014年に独立し「ウェブ小論文塾」を開校。約2000枚の答案を独自分析し「全試験共通の陥りやすいミス」を発見。
「落とされない小論文の書き方」を確立する。国家公務員試験、地方公務員試験、教員試験、大学・大学院入試、企業内の昇進試験、病院採用試験、マスコミ採用試験にいたるまで、あらゆる分野の小論文を指導し、毎年多数の合格者を輩出。同塾では、過去問題指導に加え、全国の自治体・大学の独自予想問題を作成して指導し、的中事例も多数。「答案提出翌日から3日以内」のスピード返却に加え、丁寧で的確な指導が圧倒的な支持を得ている。『落とされない小論文』が初の著書。