三井物産子会社の年収は
「日鉄物産の8掛けと耳にした」

 日鉄物産は基本的に年功序列の給与体系で、40代後半のヒラ管理職で年収1000万円。要職の管理職であれば、その100万~200万円上をいく。

 一方で、MIFの年収は「日鉄物産の8掛けと耳にした」と日鉄物産社員。三井物産からの出向者の年収はもっと高いが、プロパー社員の給与水準は日鉄物産より低いのだという。統合後に自分たちの給与水準まで下がるのではないかと繊維部門の社員たちは「まさか年収2割減になるのか」と不安に駆られた。

 日鉄物産の経営層は給与について「当面は変わらない」という言葉の後に、「能力によって給与の差が出ることはある」と続けた。この説明でますます心配になった。

 MIF社員に待遇の詳細などを聞きたくても、「コンタクトをとると独占禁止法に抵触しかねない。会社からも接触するなと言われている」と日鉄物産社員。不安を解消できずにいる。

 繊維部門社員の中には統合しても日鉄物産本体に残ることを望む社員もいるが、基本的には残れないだろうと同社幹部は説明する。というのも、今回の統合方法で有力なのが会社分割。労働組合や労働者と協議は必要でも、法律では労働者本人に必ず同意を得ることまでは求められていない。

 そんな日鉄物産で4月1日、あるチームが新設され、ベテランを中心に数人が配属となった。

リストラ候補者が
送り込まれている?

 この動きに社員たちは戦々恐々。統合を意識した人員削減でリストラ候補者が送り込まれているのではないか、これからもっと大人数が送り込まれるのではないかと恐れおののいている。

 日鉄物産繊維部門の従業員は431人(20年3月末時点)。事情に詳しい社員は「このチーム以外にも数十人規模でリストラ要員が出るのではないか」と見ている。

 新設されたチームでは、まだ具体的な業務内容は明かされていないが、営業の前線ではなくサポート業務になるとうわさされている。「配属された社員はこれまでの仕事から遠ざけられ、辞めたくなるだろう」と社員は遠巻きにうかがう。自ら辞めていくように仕向ければ、会社側は早期・希望退職募集をしないで済む。

 そもそもなぜ合併話が出てきたのかといえば、日本製鉄の意向だろう。日鉄物産は日本製鉄から経営幹部の出向も受けている。