「なぜ」を4回繰り返してお客様の向こう側へ行け

──心の奥底では求めているけど、お客様自身も言語化できていないニーズを発見する──。そのために、奥野さんが心掛けていることはありますか?

奥野:本質的な問題を発見するには、「なぜ」を4回繰り返すといいと言われています。「お客様はなぜ、ああ言ったんだろう?」「上司はなぜ、あんな指示を出したんだろう?」と深く考える。言われたことをそのままやるんじゃなくて、「お客様の向こう」に行かなきゃダメなんです。

──「お客様の向こう」に行く、ですか。

奥野:もっと直接的な言い方をすると、上司の話を聞いてちゃダメってことですね(笑)。上司はこう言っていたけど、上司じゃなくてさらにその上の部長だったらどう言うだろう? 社長だったらどう言うだろう? と考えられる人こそ出世するんです。「ネジの値段を下げたい」という上司のニーズは上司個人のニーズであって、もっと上の社長の視点を意識してみると、「会社全体のコストを下げたい」という課題が見つかる。目の前のことにばかりとらわれちゃダメなんですよ。

──なるほど! では、たとえば営業をする際も、その交渉相手が言っていることだけを真に受けるのでなく、その先を考えてメリットを提示する人が優秀である、ということですね。

奥野:そのとおり。あなたが飲食店に100万円の厨房機器を売るセールスマンで、お客様から「100万円じゃ高いから他のメーカーの80万円のものにします」と言われたとしますよね。それを真に受けて引き下がっちゃだめなんですよ。本当に優秀なセールスマンなら、「このオーブンは機能性が高いので、アルバイト一人分の人件費を削ることができます。トータルコストで考えると、うちの製品を買ったほうが安いですよ」とお客様の向こう側に行った答えを提案できるはずです。

──出世できない人というのは、「なぜ」という問いかけを、4回どころか1回もしていないかもしれない……?

奥野:1回もしてないでしょうね。たぶん、「自分が売れないのは製品が高いからだ」「会社がたいしたものをつくっていないからだ」と、自分の権利しか考えていない。出世できる人は、ちゃんとお客様の向こうが見えている。「AIに人間の仕事が奪われる」とよく言われますが、自分で考えて本質を見抜ける人ならば、これから先の未来でも求められ続けるでしょうね。

なぜ真面目に働いているのに出世できないのか?