「日本企業は遅れている」――グローバル企業と取引のあるサプライヤーはそう口をそろえる。サステナビリティのグローバルスタンダードのレベルは年々上昇し、日本企業の多くは対応し切れていない。特集『アパレル 知られざる「サステナ淘汰」』(全8回)の#6では、世界基準に追い付けない日本の繊維業界に警鐘を鳴らす。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
売り上げ優先の国内アパレルは
持続可能性では海外工場より低レベル
「ベトナム在住の車椅子ユーザーから、服が欲しいと相談があった。だけど、送っていいものか……」。こんな悩みを打ち明けるのは、アパレルベンチャーSOLITの田中美咲代表だ。
同社は身体障害者を含む誰もが着こなせる服の開発に取り組んでいる。田中氏がベトナムからのありがたいオファーにちゅうちょした理由の一つは「サステナブル」な思考からだった。
「送料よりも、日本からの輸送におけるエネルギーコストと環境負荷の影響が気になってしまって……」
これを極端な例に感じるかもしれないが、世界第2位の“環境汚染産業”であるアパレル産業において、生産から輸送、廃棄までのあらゆる環境負荷を検討することは世界の常識になりつつある。
企業にとって頭痛の種を増やすことになるが、国内のアパレル業界では、持続可能性よりも売り上げ優先の企業がまだまだ多数派だ。
しかし、海外企業のグローバルスタンダードでいえば、日本は周回遅れもいいところだ。欧米だけでなく、中国や東南アジアの後塵を拝するほどである。
「ヨーロッパはもちろんだが、中国なんかも(サステナビリティへの意識は)ずいぶん進んでいるよ。うちは海外に拠点や関連会社が幾つもあるが、サステナブルへの関心は日本が一番低いね」
こう嘆くのは仏モンクレールの製品を国内で取り扱う繊維商社、八木通商の八木雄三社長だ。同社は日本にもサステナブルファッションの波が来ると予想し、虎視眈々と準備を進めている。その一つが、2019年9月の仏プレシラへの出資だ。
プレシラは高級エコファー(人工毛皮)ブランド「エコペル」のメーカーを傘下に抱える。エコペルはサステナブルファッションのパイオニア的存在である英国のデザイナーのステラ・マッカートニー氏が絶賛しており、八木通商はこれを日本で発売すべく出資を決めたのだ。
海外のトレンドが遅れて入ってくる日本。サステナブルを巡る関心の低さは、サプライチェーンでも同様である。