中国経済はこれからどうなる?

 高齢化の進展は、社会保障費の負担増大を招きました。さらに労働人口の減少が深刻化し、賃金水準の上昇を招いたのです。

 中国が「世界の工場」となりえたのは、その賃金水準の低さでした。しかし、近年はこれが利点とはなりにくくなってきているのです。製造業にとっては、完全なる成長の足かせとなります。

 では、一人っ子政策をなぜやめないのか?

 実は、2人目から科す罰金の額が非常に大きいものであったといわれています。罰金が取れるから、一人っ子政策はやめない。しかし、労働力人口の減少に歯止めがかからない。そんな政府への暴動は増えました。

 さすがに問題を重くみた中国政府は、一人っ子政策を緩和するようになりました。2002年には一人っ子同士の夫婦には第2子を認めるようになり、2013年には両親のどちらかが一人っ子の場合に限って、第2子を認めるようになりました。

 さらに2015年、一人っ子政策の廃止が発表されました。2016年からは、一組の夫婦につき子ども2人までとする「二人っ子政策」が始まります。しかし効果は乏しく、2021年、中国政府は1組の夫婦が3人目の子どもを出産することを認める方針を示しました。

 中国では急速な高齢化と経済成長を経験しました。高齢化にともない、医療費が高くなりました。さらに経済成長は教育費の高騰も引き起こします。

 経済成長によって生活水準が向上すると、多くの人たちはそれを維持するため、子どもの数を少なくしようとします。いわゆる家族計画という考え方が普及します。

 中国は高度経済成長時代が終わりに近づいていて、低成長時代へとシフトしつつあるのです。一人っ子政策を廃止しても、出生率はそこまで上がらないでしょう。

 人口が多ければ労働者が多く、生産量も多い。そして消費者が多く、市場が大きいということです。中国が武器としていた「人口」は、これからは他国に対する優位性は持てなくなっていくかもしれません(本原稿は、宮路秀作著『経済は地理から学べ!』を抜粋、再構成したものです)。

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