「相手の目が見ていないもの」について伝えても、99.9%理解されない

 という事実です。これが「伝える」の本質です。

 人間の脳は「いま目で見ている情報」だけを理解しようとし、それ以外を「ノイズ」として無視します。

 だから、何かを伝えたければ、まずはそれを「見てもらう」ことが大前提なのです。「ゆっくりとわかりやすく伝えているのに、なぜかいつも理解してもらえない……」

 そんな心当たりがある人は、ちょっと思い返してみてください。

 あなたが話しているとき、相手は「よそ見」をしていませんか?

 逆に、それほど話し上手ではないのに、「なぜか伝わる」人っていますよね。

 そういう人は、意識的・無意識的は別として、「自分が伝えたいこと」と「相手が見ていること」を一致させる――「視線誘導」ができているのです。

 本書冒頭のスライドを見たとき、みなさんの目線はまず「オジさん」に向かいました。

 人間の目は、ただの文字列よりも人間の顔に引きつけられるようにできているからです。

 もし「研究開発投資のグラフ」を説明したければ、まずそこに聞き手の目線を引きつける必要がある。

 言葉での誘導だけでなく、手や身体の動き、声のトーンなど、工夫の余地はいろいろあります。

 もちろん、「スライド資料を見やすく改善する」というのも1つのやり方でしょう。

「プレゼンテーション」と聞くと、「外資系エリートのかっこいいスライド資料」や「TEDのような洗練された演出」を連想する人もいると思います。

 しかし、それらは実のところ、プレゼンの本質ではありません。

 事実、すぐれたプレゼンターは、つねに聞き手の目線を確実につかんでいます。

 これこそが、プレゼン上達のための、最も効率的な方法なのです。