日本人の死亡者の75パーセントが70歳以上

 皆さんは、日本人の死亡者の75パーセントが70歳以上であることをご存知でしょうか?

 また、入院や外来で治療を受ける「受療率」では、人口10万人当たり六五歳から六九歳が男性・1865人、女性・1292人なのに対し、70歳から74歳では男性・2526人、女性・1924人、75歳以上では男性・4630人、女性・5120人と70歳を過ぎると急増しています(厚労省「患者調査」、2008年)。

 一方、厚労省によれば、要介護認定者は2010年7月現在で494万人ですが、そのうちの84パーセントが75歳以上です。70歳以上で区切れば、この割合はもっと大きくなります。さらに、認知症人口は2010年現在で208万人と推計されていますが、年齢別の「出現率」では、65歳から69歳が1.5パーセントなのに対し、70歳から74歳では3.6パーセントと倍になります。ちなみに、この数値は、75歳から79歳では7.1パーセント、80歳から84歳では14.6パーセントと5歳年齢が上がるごとに倍増していきます。

 このように70歳を過ぎると、病気による入院、認知症の発症、介護の必要性が増え、死亡の確率も大きくなります。その結果、老人ホームや介護施設探し・入居、死去による遺産相続などに伴う問題が起きやすくなるのです。

高齢期の親の問題は「現役世代とその家族」の問題

 しかし、こうした「高齢期の親に関わる諸問題」は、すでにお気づきのように、実は親だけの問題ではありません。むしろ多くの場合、子供である「現役世代とその家族の問題」になります。先の私の知人の例では、認知症が進行した母親の世話のために、子供である彼が多くの時間や精神的なエネルギーを割かざるを得なくなっています。それ以上に、実際に介護を担っている彼の奥さんの肉体的・精神的負担が、彼の家庭を脅かすものになっています。

 また、親の介護をどうするか、親の死後の遺産相続をどうするかなどで、親族間で、揉めごとになるケースが後を絶ちません。こうした揉めごとが悪化すると、場合によっては骨肉の争いになり、経済的負担だけでなく、親族間の絆がズタズタになり、精神的なダメージを被る例も残念ながら見られます。

トラブルは事前に手を打てば予防できる

 私は縁あって、これまで中高年向けの事業開発の仕事に携わってきたため、多くの中高年・高齢者の方と接する機会がありました。私は、こうした機会を通じて、人間は年を取るにつれて若い頃には予想もしなかったさまざまな問題に遭遇し、トラブルになっていくことを目の当たりにしてきました。年少者には、年長者に起こり得る出来事が想像できないのです。

 一方、仕事上「高齢期の親に関わる諸問題」について比較的多くのことを知る立場にあった私は、こうしたトラブルは事前に手を打っておけば、ある程度予防できることを知りました。また、仮にトラブルが起こっても、それによるダメージを減らす方法があることも学びました。

 先の私の知人は、「アルツハイマー型認知症というそうで、一番始末におえないそうです」と言っていますが、最近の研究では、たとえアルツハイマー型認知症が発症したとしても、必ずしも始末におえないわけではありません。たとえば、学習療法という対認知症療法があり、すでに国内でのべ1万4000人の認知症の方が取り組んでおり、アルツハイマー型認知症と診断された方でも、その療法によって症状が大きく改善した例がたくさんあるのです。