EY、PwC、デロイトトーマツといった四大会計事務所が、続々と弁護士法人の立ち上げに乗り出した。彼らは、会計士や税理士、コンサルタントなどグループ内に抱える他分野の専門家を武器に、“総合格闘技”で五大法律事務所の牙城を崩しにかかる。特集『弁護士 司法書士 社労士 序列激変』(全19回)の#15では、新興組である会計事務所系の実力に迫った。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
EY・PwC・デロイトが弁護士法人を設立
ビッグ4が“領空侵犯”を仕掛けたきっかけ
「米国の法律事務所は、税務訴訟だけではなく訴訟に至る前の税務アドバイスまで普通にやっている。なぜ日本はそうではなく、税務と法務が分断されているのか」
2013年8月。「ビッグ4」と呼ばれる国際的な四大会計事務所の中で、EYジャパンが先陣を切って日本に弁護士法人を立ち上げた。その“仕掛け人”である北村豊弁護士は、2000年代後半に米国留学をしていたころ、そんな違和感を覚えていた。
伝統的な資格制度がある日本では、税務なら税理士、法務なら弁護士と、それぞれの専門家に相談する“縦割り”文化が根付いている。ただ、相談者側の立場に立てば、別々に話を聞きに行くのは無駄も多く、一緒に取り組んだ方が便利に決まっている。
そう考えていた北村弁護士に、転機が訪れる。09年から3年間、金融庁に任期付きで採用され、税制改正要望の取りまとめに携わったことだ。
当時、税務の知恵袋として頼ったのが、税理士法人をグループに抱えるEYやPwCジャパンなどのビッグ4だった。彼らと議論を重ねる中で、北村弁護士は一つの仮説にたどり着く。「ビッグ4が弁護士法人を立ち上げればいいのではないか」。
欧州では、ビッグ4が弁護士法人を抱える先例があり、日本でも同様の組織を立ち上げる障壁はないことが分かった。そこで各ビッグ4に打診したところ、一番反応が早かったEYと意気投合。13年に北村弁護士は、EY弁護士法人を設立した。
だが、すぐに軌道に乗ったわけではなく、知られざる紆余曲折があった。