何しろトップは孫正義社長(現代表取締役会長兼社長)ですから、矢継ぎ早にやるべき仕事が降りてくるうえに、現場では解決すべき課題が次から次へと持ち上がります。それら一つひとつに対して、スピード感をもって意思決定をしていかなければならないのですが、会議をうまく運用する技術がありませんでしたから、プロジェクトをスムースに動かすことができず、メンバーからは不信感をもたれ、上層部からは強く叱責されたこともありました。このままではダメだ……。こうして、否応なく、私は「会議の品質」を高めるために、試行錯誤を繰り返すようになったのです。

「最速PDCA」を回す会議術

 まず注力したのは、チーム内で行う会議です。

 ここで最も効果的だったのは、「意思決定に必要な条件は何か?」をメンバー間で共有することです。会社で意思決定を行うためには、「利益を生むか?」「実現可能か?」「企業理念と合致するか?」など、いくつかのクリアしなければならない条件があります。逆に言えば、この条件をクリアしていれば、即座にGO サインを出すことができるわけです。

 そこで、私は、すべてのメンバーに機会あるごとに「意思決定に必要な条件」を何度も伝えて、会議に何かを提案するときには、必ずそれらの条件をクリアしていることを、明確な根拠(データ)とともに示すことを徹底してもらいました。提案内容を考える段階で、品質をできるだけ高めてもらうようにしたのです。

 そして、その内容を「1枚の提案サマリー」にまとめ、会議の場で手短かにプレゼンできるように指導。つまり、メンバーの「社内プレゼン力」の向上を図ったのです。

 一方、会議のやり方も抜本的に変えました。

 定例会議に1時間を取ることが慣例化していましたが、これを基本的に30分に短縮。提案書の事前提出を徹底させ(意思決定に必要な条件を満たしていないものは、この時点で差し戻し)、会議では3分以内でのプレゼンを義務づけました。

 そのうえで、意思決定というゴールに向けてまっしぐらに議論を深めていきます。ここでも、プレゼンとディスカッションを合わせて15分以内という制約を設定。限られた時間であっても、メンバー全員が「意思決定に必要な条件」を共有していれば、議論がムダに拡散することもなく、的を射たものになります。むしろ、時間を限るからこそ、メンバーは集中力を切らさずに質の高い議論ができるのです。