さあ、今日もミミズのようにせっせと土を耕して過ごそう!
草刈りに精出そう!
ありがたいことに、まる7年たった現在でもこの暮らしは色褪(あ)せることなく、小さな子も大きな子も親も一緒になって自然と関わる暮らしを満喫し、次世代に継ぐ素地を築いています。
そしてここ数年、わたしたち家族以外にも、この里山を訪れる人が現れはじめました。里山環境に関心を持つメンバーと共にNPO法人を立ち上げて、自然体験プログラムなどを実施しているためです。
ごく私的な理由ではじめた週末田舎暮らしですが、その中でのダイナミックな自然体験をメンバーや参加者と分かち合うことで、「都市に暮らす人も、自然豊かな場所で子育てしたり暮らしたりする機会は持てる」という意識が共有されはじめています。
本書では、わたしたち家族が3年かけて土地を探し、南房総に「もうひとつの家」を持つことになり、以降、都市と里山を往復しながら暮らしてきた体験にもとづいて「二地域に暮らすこと」の意味を考えていきます。
旅行や別荘暮らしのように、地続きの日常とは違う位相に鮮やかな非日常を求めるのではなく(別荘暮らしはしたことがないので憶測です!)、わたしたちが求めたのはあくまでも、「日常を綴る場所」を増やすことでした。
場所を変え、視点を変える往復生活の中で、そのどちらもが自分の日常だということでフィードバックされるものは多く、次の一歩を踏み出す道はそれを前提につくられるため、ひとつの場所で日常を重ねてきた場合とは見える道がずいぶん違うのだろうなと、しみじみ考えることがあります。
さて、そんな二地域居住の波瀾万丈、喜怒哀楽を共にしてきた家族を、ここで簡単に紹介しておきます。
長男ニイニは中学1年生。虫取り魚獲りはもちろん、アケビの蔓(つる)でカゴを編んだり竹の器でタケノコごはんをつくったりと、遊びを生み出し続けた小学生時代を経て、今では房総の自然を丸ごと体感するトライアスリートを目指しています。
長女のポチンは小学3年生、キラッキラの街が大好きですが、ニイニの腰ぎんちゃくで育ったせいでずいぶんたくましく、沢登りも魚獲りもひととおりこなせて、ミミズの手づかみも厭(いと)いません。目下の悩みは、キラッキラの街が好きなのに排気ガスの匂いが大の苦手ということ。