同じワクチン案件でも紹介ルートによって
報酬が違う不可思議
前代未聞の思わぬ特需に沸いた医療界だったが、ワクチン業務に従事した医師全員がこのバブルの恩恵にあずかれたわけではない。実はワクチン業務の単価は、依頼ルートによって大差があるのだ。
ワクチン業務は、前述した医師求人サイトからの紹介のほか、行政や企業から委託を受けた勤務先の病院から派遣された医師も少なくないのだが、彼らは1日数千円、ともすればタダレベルの手当で派遣されることも珍しくない。21年夏の時点の相場では、大学病院経由だと「1日3~6万円」、民間の医師派遣業者経由だと「1日8~12万円」と、両者には相当の差がある。

そのため、同じワクチン業務であるにもかかわらず、「平日の勤務先からの業務出向が1日3000円」である一方、「土曜日の医師派遣業者経由では1日12万円」という、双方の報酬体系を経験したという医師も少なくないのだ。
また、コロナ重症病棟勤務の医師よりもワクチンバイトに精を出す医師の方が月の収入が良いという不可思議な事態が起こり、波紋を呼んだ。
コロナ重症病棟担当で人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)などの高度医療を担う勤務医は、多忙でワクチンバイトどころではないことが多いからだ。特別手当が出ているケースは多いものの、彼らは基本的には日頃の給料内の範囲でコロナ関連業務をこなしている。過酷なコロナ病棟よりもワクチンバイトの方が高収入という、この一見信じ難い逆転現象は、現状の医療界における報酬システムのゆがみを如実に示すこととなった。
Key Visual by Noriyo Shinoda