今野:もともとは「既存のビジネス会話術の本って、傾聴せよ、伝え方を身につけよみたいなのばかりで息苦しくないですか」「田中さんは、それとは真逆のことをやってますよね」と思って企画したんです。原稿そのものはコロナでなくても同じようなものになったとは思いますけど、「今、それを本として出す意味」がどんどん変わっていきました。

──よかった戻ってきた。ありがとうございます。

今野:最初は「自分のことはしゃべらない。相手のことも聞き出さない」というサブタイトルの部分がメインタイトルだったんです。でも、それだけじゃ「今、出す意義」がわからない。どうしようかなと思っているときに「会話って『会って、話す』と書き下せるな」と気づいたんです。それが「今、会えない状況」へのアンチテーゼとなり、この「当たり前すぎるタイトル」で出すことに別の意味が乗っかってくるだろうという感触がありました。

サラリーマン仕事の9割以上は「相手を信頼していない」企画提出時のタイトル。

田中:あのね、これは記事でもぜひ強調してほしいんですけど、『読みたいことを、書けばいい。』『会って、話すこと。』もタイトルは100%今野さんがつけましたから。わたしも「おもしろ会話術」みたいなタイトル案をいっぱい出したんですけど、全部、ボツにされました。「会って話す会話術」とかいいと思ったんだけど。

今野:そのままだと煙に巻いてる感が。

田中:「小泉進次郎構文」になっちゃう。でも、今野さんが「待ってこれ『会話術』を取ったらまともじゃない!?」「しかも、『会話』って漢字も入ってるし」ってなっていった。

サラリーマン仕事の9割以上は「相手を信頼していない」

──タイトルが決まっていく流れも、もともとのコンセプトがありながらコロナによって時代性が乗ってきたのも、偶然だったんですね。

田中:はい。意図せずそうなっていきました。本を作る過程も、もともとは二人で会って飲み屋でしゃべったものを書き起こそうとしていたんです。でも、緊急事態宣言が出て、会えなくなって、仕方なくzoom取材になっていった。そういう流れって、我々だけじゃなくてみんなが直面していたと思うんです。だから、身振り手振りや表情も含めて、「これまで会って話していたときに考えずにやっていたことは、何を意識してやっていたんだろう」「どういう組み立てになっていたんだろう」と、改めて深く考えましたね。

──田中さんは「会うことの意味」みたいなところを、今、どんなふうに捉えていますか?

田中:これは今野さんとも何度も話し合ったことなんですけど、会って話すときは「二人の間に何かができる」ってことなんですよね。「僕のことをわかってください」とか「僕はこういう仕事をしてるんでバリューがあります」とかそういうことじゃなくて、二人で会ってる時間に生じたこと、一緒に見たことそのものが価値なんだと。

──お二人のツイッターや、この本を読んだ人たちの感想を見ていても「二人の間に何かができる」という部分はとても際立っていますね。

田中:会って話しているときって、基本的に気が散ってるじゃないですか。相手のことをじっと見て問い詰めるわけにもいかないから。その「気が散ってるところ」を二人で楽しんだり、盛り上がったりして、それが人生で忘れられないことになったりするんだと思います。

でも、zoomだと全然気が散らない。散らないどころか自分の顔が見えるでしょ。だから、自意識も過剰になるんですよ。あれは辛い。

今野:あれは本当に辛いです。「ここ」に限られるのは本当に疲れます。