最高値を更新した天然ガスや石炭に歩を合わせるように原油価格も上昇してきた。産油国が増産に慎重な姿勢を崩さない中、コロナ禍からの経済回復に伴い需要は上向いてくる。高騰した天然ガスからの需要シフトも進む。最高値にはまだ遠いものの、需要期の冬に向けて一段高となる公算が大きい。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
天然ガス・石炭に続き原油相場も上昇
スタグフレーション懸念も
天然ガスや石炭に続き、原油にも価格高騰が波及するとの懸念がある。経済全体への影響が大きい原油などエネルギーが高騰すれば、物価全般が上昇しやすくなり、コロナ禍からの経済正常化の動きに水を差すことが懸念されるようになっている。
半導体不足などサプライチェーン問題や中国の不動産問題もあり、物価上昇と景気停滞が併存するスタグフレーションを警戒する声も増えてきた。
振り替えると、OPEC(石油輸出国機構)にロシアなど非OPEC産油国を加えた「OPECプラス」は、7月18日に閣僚会合を開催して、原油の増産方針で合意した。
内容は、8月から原油生産量を毎月日量40万バレルずつ増やす、それまで来年4月末を期限としてきた生産協調の枠組みを来年12月末まで延長する、一部の国について減産の基準となるベースライン生産量を来年5月から引き上げる、などであった。
この増産合意に加えて、デルタ株の感染拡大への懸念もあって、7月19日の原油相場は急落したが、その後、経済正常化に伴う石油需要の増加はOPECプラスによる増産分を上回るとの見方に落ち着き、原油相場はいったん持ち直した。
8月後半にかけて世界的にデルタ株による感染拡大への懸念が一段と強まり、各国の景気指標に減速感が見られると、原油相場は再び下落した。
しかし、その後は、米メキシコ湾の石油施設がハリケーンに被災し、その復旧に時間がかかったこと、欧州の天然ガス危機や中国の石炭不足など世界的なエネルギー需給の逼迫(ひっぱく)が懸念されたこと、そうした中でも10月4日にOPECプラスは原油の大幅増産を見送って計画通りの増産幅にとどめたことなどが原油相場を押し上げた。