原油相場が高値更新も、先行きに不透明な影を落とす2つの要因Photo:PIXTA

原油価格が7月に入り高値をつけた。コロナ禍からの経済正常化や産油国の減産幅縮小ペースが小幅なものになっていることが背景にある。しかし、サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)の対立や新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大が相場に先行きに不透明な影を落としている。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

原油は6年半ぶり高値
年初からは5割上昇

 国際商品(コモディティー)の中心的存在である原油が7月に入って6年8カ月ぶりの高値をつけた。原油は、世界的な「脱炭素」の動きや新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた運輸関連需要の落ち込みなどが下押し材料となってきたが、年初から5割も上昇し、株式や他のコモディティーに比べて出遅れ感は薄れている。

 最近の相場の変動材料を振り返ってみる。

 5月初めは、世界第3位の消費国であるインドにおける新型コロナの感染拡大が懸念される状況だったが、世界1位の米国や世界2位の中国での景気回復の動きが勝るとの見方が優勢となり、原油相場は堅調に推移した。

 5月7日にはコロニアル・パイプラインがサイバー攻撃を受けてシステムを停止する事態に陥った。週明けの10日には一時ガソリン先物が4%高となり、原油も連れ高する場面があったが、大半が1週間以内に操業再開が可能との見通しが示されたことやインドでの新型コロナ感染拡大が懸念されたことが原油の上値を抑えた。

 18日は、米国産原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)、欧州北海産原油のブレント、ともに一時3月上旬以来の高値をつけたものの、ロシア高官が、イラン核合意を巡る協議で大きな進展があったと述べたとの報道を受けて、相場は下落に転じた。

 19日には、イラン核合意が再建されてイラン産原油の供給が増える可能性が意識されたことに加えて、日本・台湾・インドなどでの新型コロナ感染拡大が懸念されたことやFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨を受けて早期利上げへの警戒感が強まったことも弱材料になり、WTIは3.3%安、ブレントは3.0%安となった。

 21日にはWTIが1バレルあたり61.56ドル、ブレントが64.57ドルと4月下旬以来の安値まで下落した。

 しかし、月末にかけて原油相場は上昇基調に転じた。米金融大手のゴールドマン・サックスのレポートで、イランが10月に原油輸出を再開するというシナリオにおいても今夏に原油価格(ブレント)が80ドルに達するとの見通しが示されたことなどが買い材料になった。