みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#9では、みずほが最初の大規模システム障害を起こした直後の2002年4月にフォーカスする。当時みずほは混迷の極みにあった。続けざまのシステム障害を避けるため、顧客へのお詫び行脚と同時に、人海戦術によるシステム障害の回避策を講じていた。しかし、その回避策の中で決済処理における「顧客差別」疑惑が浮上。取引先企業から怨嗟の声が上がった。

「週刊ダイヤモンド」2002年5月25日号特集「みずほ漂流銀行」を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

みずほ誕生直後に早くも存亡の機
「Xデー」は4月30日

「(4月)30日に失敗したらうちはつぶれる」――。

 世界初の分割合併で、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行が発足した矢先の2002年4月下旬。両行内では早くも存亡の機さえ取り沙汰され始めていた。緊張感が張り詰める行内フロアのそこかしこで、幹部行員が顔を寄せ合った。4月30日は、月末に当たるだけでなく、大型連休の谷間になるため、ただでさえ1年間で決済件数が最も多い。口座振替え、給与振込みなど計1200万件の処理が予定されており、みずほの「Xデー」になるとみられていた。