「金・銀・銅・ドクロ」のコインのやりとりで即効性のある評価制度を

――中野さんは、部下の人事評価や査定もしないそうですね。

中野 人それぞれ個性があるのに、人が人を評価するなんておこがましいですよ。年上だから、権限があるから、といった理由で、人の評価を決めつけるなんてよくないと思っています。

 そもそも僕は、半年前や1年前にあったことは忘れてしまうので評価できません。人材育成という言葉もありますけど、人が人を育成するなんてできなくて、本人が努力するから成長できると思っています。

 だから仕事は、「この人と仕事したい」と思ったその瞬間の出会いがすべてで、お互いが「個」と「個」として役割分担し合えるチームを組めばいいと思います。

 そして、過去や未来のことは考えず、今やるべきことをやる。それ以外何も考える必要はないと思うんです。

 その代わりに、上司から部下、部下から上司、同僚から同僚を評価する「金・銀・銅・ドクロ」のコイン制度を導入しています。台湾の会社時代に導入したもので、寺田倉庫でもやっていました。

 これはひと言で言うと「即効性のある360度評価制度」で、社員たちはコミュニケーションコインという呼び方をしています。

 相手に対して「ありがとう」とか「素晴らしい」「とんでもない」と思ったときの気持ちとして渡すのが「金・銀・銅のコイン」で上限5万円。逆に、そこは改善してほしいと思ったときに渡すのが「ドクロのコイン」で上限は-5千円。

 経営トップから新入社員まで社員全員に決まった数のコインを渡して、日常的にみんなやりとりしているので、貯まる人は結構貯まるんですよ。

 コインをもらった人は年に2回人事に持っていきます。金・銀・銅はそれぞれ換算する金額が決まっていて、ドクロコインはマイナスとして精算しますが、多い人は年間で100万円近くになりますね。

――中野さんもかなりコインが貯まるのでは?

中野 エレベーターの中でよくドクロコインをもらいました(笑)。僕は思ったまま感じたままをすぐ口にするので、相手の容姿をほめたつもりが不快にさせてしまうこともあるみたいで。

 でも、僕が言う言葉の受け止め方は、時と場合と人によって違うので、相手の感性や相性を知るためにはすごくいいシステムですよ。

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