変わり者呼ばわりされて、嫌われてもいい

――360度評価を導入する企業は増えているようですが、コイン制度のようにオリジナリティのある人事評価制度はあまり聞きません。日本の企業でそういう取り組みが広がらないのはなぜだと思われますか。

中野 それは多分、「あの人がやることは特別だから」って変わり者扱いする人が日本は多いから。新しいことをやると異端児扱いしてレッテルを貼っちゃう。

 特にドクロコインの制度を導入するのは、一般的な会社にとってはハードルが高いと思います。なぜならば配る側ともらう側の関係性がしっかりしていないと、お互い良い気分はしないからです。

 でも、変わり者が時代をつくることもあります。ビートルズもサザンオールスターズも、デビューした頃は変わった音楽やる人たちという見られ方をしていました。

 瑛人の『香水』という歌も「何あれ?」っていう大人がいるけど、すごくいいフラれ方をしていて、ドロドロしていないから僕は好きなんですよ(笑)。

 でも、「最近の若い人の歌はわからない」っていう大人も多いでしょう。それって結局、無意識に壁を作ってしまっているように思います。

 自分がわからないことを排除してしまうと、進歩がなくなってしまう。人でも会社でも、革新がなくて3年以上も停滞していると、そのうちいなくなるでしょう。

 トライしないほうが安全っていう人がたくさんいるんですよ。僕は反対にトライしないと不安になっちゃう。この世はすべて流れているから、変化を常に認識していないと不安ですね。

 いつも敏感でいるためにも、一人で考える孤独の時間を大事にして、自分なりに変化に対応しています。

――成功や失敗より、「65点」の期待を。過去の評価より「今」を意識すれば、誰でも変化を感じやすくなりそうです。「個」の力を最大限発揮するために、必要なもの以外は何も要らないという軽やかな考えは、著書『孤独からはじめよう』にも『ぜんぶ、すてれば』にも共通するテーマですね。

中野 軽さはすごく大事です。そういう意味で言うと、僕は超軽いですよ。無理して自分が要らないと思うことにしがみつく必要はないので。だから、「これはやっぱり違う」と思ったら「朝令暮改」どころか「朝令朝改」になることもある。

 それで最初は戸惑う人もいるけれど、本質的にそういう人間だと思ってもらえると僕は結構分かりやすい人間なんです。それでもついていけないと思う人は離れてもらって仕方ない。

 僕はみんなに好かれるために働いているわけじゃなく、自分や繋がっている仲間のために働いています。経営者は人気稼業ではないですからね。

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【「だから、この本」大好評連載】
第1回 本やネットで「答え探し」をしていると、いつまでたっても成功できない理由

77歳「伝説の経営者」が、瑛人の『香水』を聴くワケとは?中野善壽(なかの・よしひさ)
ACAO SPA & RESORT代表取締役会長・CEO
東方文化支援財団代表理事
寺田倉庫前代表取締役社長兼CEO
1944年生まれ。弘前高校、千葉商科大学卒業後、伊勢丹に入社。子会社のマミーナにて、社会人としてのスタートを切る。1973年、鈴屋に転社、海外事業にも深く携わる。1991年、退社後すぐに台湾に渡る。台湾では、力覇集団百貨店部門代表、遠東集団董事長特別顧問及び亜東百貨COOを歴任。2010年、寺田倉庫に入社、2011年、代表取締役社長兼CEOとなり、2013年から寺田倉庫が拠点とする天王洲アイルエリアをアートの力で独特の雰囲気、文化を感じる街に変身させた。2018年、日本の法人格としては初となるモンブラン国際文化賞の受賞を果たす。2015年12月、台湾の文化部国際政策諮問委員となる。2019年に寺田倉庫を退社。地域や国境を越えた信頼感の醸成をはかり、東方文化を極めたいという飛躍したビジョンを持つ東方文化支援財団を設立し、代表理事に就任。国内外のアーティスト支援を通して、地方再生やアジアの若手アーティストの支援などを行っている。2021年8月、ホテルニューアカオ(ACAO SPA & RESORT)代表取締役会長CEOに就任。
著書に『ぜんぶ、すてれば』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『孤独からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。
77歳「伝説の経営者」が、瑛人の『香水』を聴くワケとは?