45歳にもなって会社を辞める可能性を意識しない方が、おかしい

――中野さんは今まで世界150くらいの国や地域を旅されたことがあるそうですね。それも人との適切な距離感を知り、自分に向き合ういい経験になったのではないでしょうか。

中野 それは間違いないですね。知らないところへ行くと、すべてゼロリセットできます。肩書きもキャリアも関係ないし、どこの誰かもわからない、本来の「素(す)」の自分に戻れますから。

 そうすると必然的に自分の「個」を研ぎ澄ませて判断、行動するしかありません。

 これがものすごく重要で、人生っていうのはたまにリセットしないと、しがらみばかり増えて「ああしておけばよかった。こうしておけばよかった」と後悔ばかり残るんです。

 だから僕は、同じ会社で10年も働き続けていたら、いったんリセットしたほうがいいと思いますね。

――サントリーの新浪剛史社長の「45歳定年説」が大きな波紋を呼びました。多くは批判の声で新浪社長が釈明しましたが、一連の顛末についてどう思われましたか。

中野 45歳にもなって会社を辞める可能性を意識しない方が、おかしい。そう思います。経験を積めば働き方も能力も変わっていきますから、ステップアップしたい、しようと思うなら自分から変化に対応していかなくてはいけません。

 定年制度という外圧がなければ変われない人は、その基本的なスタンスに問題があると思います。

――中野さんは、47歳でアパレル企業の鈴屋を退職されました。そして何のツテもアテもなかった台湾で出会った人たちとの縁がつながり、大手財閥が率いる百貨店事業を担います。そのようなチャレンジ精神で自分の可能性を広げるために必要なことは何でしょうか。

中野 時には知らない国を旅することですね。1年か2年、バックパッカーになって旅行するのが一番だと思います。

 ただ、僕が言うところの旅行は、お金を使いに行くのではなく、現地で働いて稼いだお金を使いながら旅すること。飲食店のバイトでも何でもいいから、その町に滞在している間は少額だけでも稼いで働いてみると、そこに住む人たちの生活や考え方の違いがわかります。

 以前、僕の秘書をしていた女性も今フランスに滞在していて、ポールダンスをやって稼いでいるみたいです。かなり貧乏している可能性もあるけれど、若いうちにそういう生き方を経験している人は面白いし、強いですよ。

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