表現するよろこびをはぐくむために、
あえて正解からはみだす

末永 このことを考えても、ダ・ヴィンチは当時の「正解」からはみだしていましたが、ダ・ヴィンチ以降、対象を観察して描くことや、科学的な見方をすること、写実的に絵を描くことは絵画の世界のスタンダードとなりました。このように、既存の「正解」からはみださない限り、未来につながる答えは生まれないのではないでしょうか。

小野 はみださないと新しいものは生まれないということは、今のお話のように歴史的にもいろいろなエピソードがあると思います。今、社内でも「はみだそう」と言って喧々諤々やっているところで、今のところからはみだしていかないと新しいものはつくれないという点は、ビジネスの観点でもまったく同感ですね。

 ぺんてるは、新しいもの、世の中にないものをずっとつくり続けて大きくなってきた会社です。ですからある意味、正解からはみだしていた時代もあったと思います。

 過去の成功事例に則っていけば、ある程度の正解は導けます。それはそれで大事だと思いますが、正解を超えて新たなものを生み出すには、考え方を変えないと無理でしょう。

 これから先、さらに新しく変わっていく世の中で、われわれのビジョンを実現するためにも、正解からはみだす必要があります。今までもやってきたことですが、表現するための道具をつくり、世界中の人たちに表現するよろこびを届け、よろこびを分かち合う企業を目指していかないといけません。正解からはみだしながら、ぜひビジョンを実現したいと思います。

 今回はアートの世界のお話が中心でしたが、正解からはみだすことの大切さや、興味のタネをみつける方法など、たいへん参考になりました。

末永 社長さんから「正解からはみだしてもいいんだよ」って言ってもらえる会社ってとても素敵ですよね。挑戦できる環境があるって、本当に貴重ですばらしいことだと思います。本日はありがとうございました!

(対談終わり)

◆対談者プロフィール◆
小野裕之(おの・ひろゆき)
ぺんてる株式会社代表取締役社長
1958年生まれ。東京理科大学理工学部卒業。1982年、ぺんてる入社。1989年よりユーロぺんてるに出向し、1997には欧州統括本部財務統括管理部長に就任。その後、工場管理部次長、経営戦略室長、執行役員、取締役生産本部長などを経て、2020年より現職。

末永幸歩(すえなが・ゆきほ)
美術教師/浦和大学こども学部講師/東京学芸大学個人研究員/アーティスト
東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。「絵を描く」「ものをつくる」「美術史の知識を得る」といった知識・技術偏重型の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を、東京学芸大学附属国際中等教育学校や都内公立中学校で展開。生徒たちからは「美術がこんなに楽しかったなんて!」「物事を考えるための基本がわかる授業」と大きな反響を得ている。
自らもアーティスト活動を行うとともに、内発的な興味・好奇心・疑問から創造的な活動を育む子ども向けのアートワークショップや、出張授業・研修・講演など、大人に向けたアートの授業も行っている。初の著書『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(ダイヤモンド社)が16万部超のベストセラーに。オンラインで受講できるUdemy講座「大人こそ受けたい『アート思考』の授業──瀬戸内海に浮かぶアートの島・直島で3つの力を磨く」を2021年5月に開講。