「欲しいものほど手に入らない」のはなぜか?密教阿闍梨が説く逆説的なこの世の仕組みPhoto:PIXTA

仁義礼智信の五つで構築される「五徳」。東洋哲理では、この五徳が経済とも密接に関係しあっていると説いています。本書『「自分」の生き方』には、辛い中にあっても自分を失わず、自分だけの人生を、自分らしく生きるための考え方を、密教の阿闍梨であり陰陽五行の第一人者である著者が対話形式、小説仕立てで解説しています。連載5回目の今回は、五徳について詳しく解説していきます。(密教阿闍梨・経営コンサルタント 小池康仁)

二宮尊徳が重視した「五徳」

 五徳とは五常と同意で、古来より国家戦略・経営戦略に用いられてきた。日本では江戸時代末期を生きた二宮尊徳が、1820年に五常講という金融システムを構築した事が有名だ。五常(五徳)を実践する者であれば、その心を担保にお金を借りられるという画期的なシステムだ。その者の在り方が担保となる信用取引だ。後に、これが信用組合の原型となっていく。彼は「道徳を忘れた経済は、罪悪である。経済を忘れた道徳は、寝言である」という言葉を残している。

 二宮尊徳は、五徳と経済は密接に関係しあっていると言っているのだ。古来より重んじられてきた五徳を、仕事にどう適応させていけば良いだろうか。

 五徳は仁義礼智信の五つで構築される。これは人間が備えるべき五つの要素を表している。「仁」は人の存在を慈しみ、お役に立ち、守ること。「義」は汚い事をしない、筋を通し、裏切らないこと。「礼」は長幼の序をわきまえて、礼節を守り綺麗な言葉遣いをすること。「智」は常に知的好奇心を抱き、物事の本質を探究する事。「信」は人を引きつける魅力を持つことである。

 さらに、五徳には五方向と五本能が定義される。仁は東、守備本能と仕事。義は西、攻撃本能と成果。礼は南、伝達本能と夢。知は北、習得本能と本質。信は中央、引力本能と人脈・お金・権力・チャンスある。

 東西南北に位置する仁義礼智の四徳目をバランスよく稼働させることで、中央の信(人としての信用・信頼)を得ることが出来て、人脈・お金・権力・チャンスを得て人生や仕事が上手く回るとしている。

 これらをすべて覚える必要はないが、ポイントは押さえて欲しい。例えば、やりがいのある仕事をしたければ、仁徳の守備本能を意識すべきである。事(事象)に仕えると書いて仕事となる。従って、仕事の本来の目的は、お金儲けではないのだ。