サウナは、もはや日常の習慣のひとつに
塩谷 僕は、逆に、サウナに入る頻度は減ってきましたね。
加藤 僕は、基本毎日入りますが、1回1時間かからないくらい軽めに入ります。
塩谷 出張行くと朝入って、夜も入ることありますが、お風呂ついでに1セットだけとか。入りたい欲の高まっている時に入りたいので、波がくるまで、入らない感じですね。自分の体の感覚に、正直に従う。
加藤 僕も1時間ぐらいで十分ですね。最初からととのってる、というか、そんなに欲さなくなってきました。自律神経を測ると、最初から自律神経の機能が高いんですよ。でもしばらくサウナに入らないと自分の自律神経の数値も下がっていきますので、サウナに日常的に入ることで自律神経の働きが高く保たれているのではないかな。
塩谷 だんだんお風呂入る感覚になってきますね。実際に、フィンランドでは、お風呂のような日常だから、「ととのう」とか劇的な体験を求めてないようですね。
加藤 まさに、日本人のお風呂みたいな感覚ですね。以前、フィンランド大使に、「サウナが日本で盛りがってますが、フィンランド人的には、どうですか」と聞いたら、フィンランド人にとってサウナは、友達と話すとか、さっぱりするとか、そういう日常生活の一部だと。よく言われる「アバント(氷に穴をあけた水風呂に入る)」も、僕は人生に一度しかやったことないと。
塩谷 「アバント」はフィンランドでも、クレイジーなんでしょ(笑)。
加藤 そう、特別なものをサウナに求めているわけじゃなくて、ただ友達と一緒に語らう場所、居酒屋みたいな感じなんです。
――日本のサウナ、これからどうなっていくと思われますか?
塩谷 コロナ禍もあって、しかも混んでるから、公衆の場に行きたくないって人たちもいて、プライベートとか、クローズのサウナがでてきてきてますね。それで、そのコミュニティ内で、今度うちのサウナに来てと、誘いあったり。
加藤 テントサウナなら20万円しないくらいですからね。公衆サウナ人気も続くと思いますが、一方で、プライベート化の流れもでてきて普段の生活や文化に、定着してきている感じがありますね。
塩谷 日本は、なんでも独自の文化にしていきますよね。サウナ室内にテレビがあったり、わざわざ都会で水をチラーで冷やして水風呂作ったり。フィンランドだと、水風呂はあれば入るけど、なきゃ別に、シャワー浴びて、外にすぐ出たりしますが。日本人の変態的なこだわりが詰め込まれたすごいサウナもいっぱいできていますね(笑)。サウナシュランで3年連続1位獲得中の「御船山楽園ホテル らかんの湯」(佐賀/武雄)とか、本当にすごい。
加藤 あれは、社長の小原嘉久さんのこだわりが詰まった究極のプライベートサウナに近い(笑)。ああいう究極のサウナにも、たまには行きたいけど、一方で、家の近くで、まあまあよくて、すいていてふらっと行ける、気軽なインフラサウナが、結局、一番いいというのもある。
塩谷 「らかんの湯」はF1だけと、フィットとか、カローラレベルの普通の「サウナ」の性能が上がっていくほうが、世の中のためになるということもありますよね。ハレとケでいうなら、僕らは、最近、サウナが「ケ」になってきてますね。
加藤 「ご褒美サウナ」と「インフラサウナ」に大きく二極化してますね。さらにプライベートサウナも出てきて、楽しみ方がどんどん広がっているのはいいですよね。
2005年北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院を始め、道内各地での形成外科勤務を経て、医療ベンチャーなどにも勤務。2021年5月、東京渋谷に、CLINIC TEN SHIBUYA を開業。BiodataBank(株)のメディカルラボ統括責任者や、日本サウナ学会の監事など様々なプロジェクトに参画中。よりよく生きるための「well being」に興味を持ち、人々の「健康をアップデート」することをvisionに掲げている。
慶應義塾大学医学部腫瘍センター特任助教・日本サウナ学会代表理事。北海道大学医学部医学科・同大学院卒。専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。病理学、生理学にも詳しく、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。著書に「医者が教えるサウナの教科書」がある。