NHK「おはよう日本」でも取り上げられ、
新入社員のバイブルとして60万人以上のビジネスパーソンに
読みつがれている『入社1年目の教科書』。
『入社1年目の教科書 ワークブック』とともに
多数の企業で新人研修のテキストとして採用されている
「新社会人のためのガイドブック」の著者である
岩瀬大輔さんに、何かと不安な入社直前の今、
どのようなことをしておくといいか伺った。
(まとめ/ダイヤモンド社書籍編集局・和田史子)
不安という感情に気づき、
問題解決に変えていく
―― 世界情勢や地震、コロナウイルスなど、不安の尽きない毎日ですが、
4月から新社会人のみなさんから、「新しいスタートを迎えるにあたって
今この時期をどう過ごすといいのか」という質問を多数いただきました。
この春社会人になるみなさんは、大学生活のほとんどをコロナ禍で
過ごし、海外に留学したり旅行したりアルバイトをしたりといった経験も
できず、授業もオンラインで友人と会う機会も少なかったという人もいました。
そのため、相談する人がいなかったり、仲間と働くことに対して
自信が持てない人も多いようです。『入社1年目の教科書』の著者である
岩瀬大輔さんは、今の時期何をするといいと思いますか?
岩瀬大輔(以下、岩瀬) たしかに入社直前というのは、期待と不安、両方あるでしょう。
特に今年は不安のほうが大きいかもしれません。
まずそうした不安を自分が抱いているのだという感情に気づいていることは大切です。
感情を受け止めた上で、ではどうすれば不安を少しでも解消できるのか、
今自分ができることは何かを考えてみます。考えることで、不安は問題に変わり、
「どうしよう」という感情から「問題解決しよう」に思考に切り替わります。
不安にはいろいろありますが、その中の一つ、「新しい仕事をするにあたっての不安」を考えてみましょう。
「仕事の不安」というのは、たいてい「準備不足」から出てくるものです。
言い換えると、しっかり準備をしておけば、不安は解消できるということです。
『入社1年目の教科書』には「予習・本番・復習は3対3対3」という項目があります。
学生時代は、授業の前に予習をしていたのに、社会人になるとほとんど予習をしなくなってしまった、という人がいます。
例えば、「今日の議題って何だったけ?」思いつつ会議に出席したが、意見を求められても何も言えず、終わったら他の仕事に忙殺され、何を議論していたのかも忘れてしまう。これは「予習0:本番かろうじて10:復習0」です。これでは時間がもったいないですよね。
もし会議のレジュメを事前に目を通し、わからない言葉や内容について、あらかじめ上司や先輩に質問して理解できていたら、意見を求められたときに、何らかのコメントはできたでしょう。これが予習です。むずかしいことではありません。
会議で意見を求められたのに何も言えなかったのは、準備不足が原因です。準備をしておけば、自信をもって発言できます。
また、会議中にさらにわからないことが出てきたら、会議後などに上司や先輩に確認し理解することも大切です。復習ですね。
―― 『入社1年目の教科書』や『入社1年目の教科書 ワークブック』を読んで準備しておくというのは有効でしょうか?
岩瀬 じっくり読まなくても、見出しの項目を眺めておくだけでも準備になります。
大切なのは、ただ読んで「そうなのか」と鵜呑みにせずに、「自分だったらどう行動するか」を考えてみることです。
例えば『入社1年目の教科書』には「朝のあいさつはハキハキと」という項目があります。
「私の会社はリモートワークなので初日からオンラインの社内ミィーティングなんだけれど…」という人は、「朝のあいさつはハキハキと」をどう応用すればいいのか、考えてみることをおすすめします。
オンラインに入室する際に「新入社員の●●です。よろしくお願いします」と滑舌に気をつけて元気にあいさつしてみようなど、工夫ができるはずです。
―― なるほど、新入社員1日目のオンライン社内ミィーティングの第一声を用意しておくだけでも、緊張や不安は和らぎますね。
本の項目は「仕事の本質」が書かれているから、自社の環境に合わせて、自分でカスタマイズしてみる。それが準備になるというわけですね。
岩瀬 たしかに働く環境はリモートワークだったり、メッセンジャーを使ったりと変化はありましたが、仕事の本質は変わらないと私は考えます。本質を押さえた上で、「自分だったらどうするか」と考え、上手に活用していただけたらと思います。
よく受ける質問に「急な連絡は電話がいいのか、それともLINEやメッセンジャーがいいのか」というものがあります。
これはあくまで「手段」の話にすぎません。
重要なのは上司があなたからの連絡を確実かつ即時チェックできるような手段を選ぶことです。
これが「目的」ですね。
上司は午前は会議で電話に出られないのでメッセンジャーツールのほうが確実であればそのほうがいいですし、直接携帯電話にかけてほしいという人であればそのほうがいいでしょう。電話応対してくれるスタッフに連絡するほうが確実であれば、部署の電話にかけるのが正解でしょう。A部長にはメッセンジャーでB部長には電話といった具合に、取るべき手段は人によって変えることもあります。このように「目的」を理解した上で「手段」を選ぶというのが、本のおすすめ活用法です。
では先ほどの「電話かLINEかメッセンジャーか」問題について、どんな対策が取れるかといえば、
「急ぎでご確認いただきたい場合、どのように連絡するのがよいですか?」と、事前に確認しておくことです。
これも準備といえます。
『入社1年目の教科書』の50ルールを、みなさんの不安解消と問題解決のヒントとしてご活用いただければうれしいです。
みなさんの春からの新生活、心から応援しています。
※『入社1年目の教科書』の50ルール、気になる人はぜひチェックを
ライフネット生命保険株式会社 共同創業者
1976年埼玉県生まれ、幼少期を英国で過ごす。1998年、東京大学法学部を卒業後、ボストンコンサルティンググループ等を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で修了(ベイカー・スカラー)。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げ、2013年より代表取締役社長、2018年6月より取締役会長に就任。同年7月より18ヵ国の国や地域に拠点を有するアジア最大手の生命保険会社であるAIAグループ(香港)に本社経営会議メンバーとして招聘される(いずれも2019年退任)。2020年、スパイラルキャピタルのマネージングパートナーに就任し、テクノロジーで業界変革や産業創出を行う企業の支援を行う。また、ベネッセホールディングスなどの社外取締役も務める。
世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。著書は著書は『入社1年目の教科書』『入社1年目の教科書 ワークブック』(ダイヤモンド社)など多数。