ダイエット、禁煙、節約、勉強──。何度も挑戦し、そのたびに挫折し、自分はなんて意志が弱いのだろうと自信をなくした経験はないだろうか? 
目標を達成するには、「良い習慣」が不可欠だ。そして多くの人は、習慣を身につけるのに必要なのは「意志の力」だと勘違いしている。だが、科学で裏付けされた行動をすれば、習慣が最短で手に入り、やめたい悪習も断ち切ることができる。
その方法を説いた、アダム・グラント、ロバート・チャルディーニら一流の研究者が絶賛する1冊『やり抜く自分に変わる超習慣力 悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』(ウェンディ・ウッド著、花塚恵訳)より一部を公開する。

「習慣が身につく人、挫折してしまう人」の性格の差とは?Photo: Adobe Stock

習慣と性格の驚くべき関係

 参加者にもっとも多く共通する習慣は、歯を磨く、着替える、就寝する、起きるといった予想どおりのものだった。どれも別のことを考えながらとる行動の最たる例なので、科学的な知見を持ち出すまでもない。だが、ほかの結果については違った。

 私たちはこの調査を通じて、習慣に支配される行動の割合は人によって異なることが実証されると期待した。多くの行動が習慣になっている人は、仕事、食事、遊び、運動の時間が決まっていて、そうでない人は時間を決めずに気まぐれに行うと予想したのだ。

 この予想は調査チームの経験から生まれたわけではない。そういうものだと世間に浸透しているし、古い小説でも描かれている。ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』の主人公フィリアス・フォッグは、歩数まで決めて規則正しい生活を毎日送っていたし、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の主人公スカーレット・オハラは、その場その場で機転を利かせては、次々に押し寄せる波乱を何とかやり過ごしている。

 私たちは、フォッグ、オハラ、その中間に位置する人々が見つかるものだと思っていた。だが結果は違った。性格の違いでは、習慣に支配される割合は説明がつかなかった。個々人の性格は習慣に無関係だったのだ。

 習慣に依存する割合は誰もがだいたい同じであるとなれば、性格のせいだという思い込みはいよいよ捨てるしかない。ほかにも興味深い発見があった。日常的に行うことの大半が、習慣によるものだったのだ。

 シャワーや着替えなど衛生面で毎日行うことについては、88パーセントが習慣的に行われていた。職場での作業については55パーセント。ウエイトトレーニング、ランニング、スポーツは44パーセント。休憩をとる、くつろぐ、ソファーに座るといったことは48パーセントという結果だ。

 娯楽の消費ですら自動的に行われるようだ。参加者が同じ状況でテレビを観るときは、観ている番組以外のことをよく考えていた。人は、注意を払わなくても楽しむことができるらしい。テレビ番組や音楽を繰り返し視聴することに関しては、ときどき注意を向ければ十分だった。そんなのは当然で自分にも覚えがある、と思うかもしれない。だが私はその事実から、当時まだあまり研究されていなかった習慣の特性を感じ取った。習慣には、何があっても実行するという特性があるのではないか。

 テレビ番組は、プロの作家、俳優、広告主が集まって、それぞれが役割をきっちりと果たしてつくられる。誰もが視聴者の関心をつかんで離すまいと、最善を尽くす。現代のテレビは、人間が生み出す気晴らしの最先端をいくものだ。そんな巧みな誘惑ですら意識の水面下へ沈み、最終的には習慣の力によって、顕在意識はテレビから解放され、怖くてたまらない水曜日の午後の会議について考えてしまうのだ。