選別される生保・損保・代理店#5Photo:Terry Vine/gettyimages

就職人気ランキングでは常に上位に位置する東京海上日動火災保険。順風満帆のはずが、転職の道を選ぶ人材も少なくない。特集『選別される 生保・損保・代理店』(全28回)の#5では、SNSで同社の実態を克明に記しているやなぎ氏の協力の下、東京海上の社内事情について覆面座談会を実施した。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 藤田章夫、片田江康男)

【座談会参加者】
・やなぎ:元東京海上日動火災保険社員(Twitterアカウント@yanagi_092)。30代後半、有名国立大学文系卒、損害サービスと本社のコーポレート部門 「東京海上・残酷日記」が業界で話題
・A:元東京海上社員。20代後半、有名国立大学理系卒、損害サービス
・B:元東京海上社員。30代半ば、有名国立大学文系卒、地方営業・企業営業

元東京海上日動社員が語る
入社動機と仕事内容のリアル

――皆さんは有名国立大学を卒業し、就職人気ランキングでは常にトップクラスの東京海上日動火災保険に入社されました。なぜ東京海上を選ばれたのですか。

A:私は理系なのですが、理系出身者は大学の研究室の紹介で、大手化学メーカーや素材メーカーなどの研究所に就職する人が多いのです。ただ、研究所といえばたいてい地方にありますので、それが嫌で普通に就職活動をしました。

 でも、就職活動の期間だけでは業界や企業のことを理解し切れず、取りあえず年収が高ければいいやと思って、東京海上を選びました。

やなぎ:理系の人はそういう人が多いですよね。

A:それと、理系出身者が大手メーカーの研究職についても年収は大して高くありません。トヨタ自動車であっても35歳で年収1000万円くらいだと聞きます。年収が高いといえば総合商社ですが、最初に内定をもらったのが東京海上でしたので、そのまま入社しました。

やなぎ:結局のところ、東京海上の年収の高さと人の良さで入社している人がほとんどですね。特に、入社動機として「人が良い」を挙げる人は多い。むしろ、この二つ以外に何かありましたっけ?(笑)

B:ないですね(苦笑)。

やなぎ:インターネット上で示されている就職偏差値の高さは、年収の高さと人の良さ、そして仕事内容で決まっていると思います。そして、東京海上の仕事はやりがいを感じられないものが多く(笑)、その部分を年収の高さと人の良さでバランスを取ってきたと理解しています。

 詳細は私の「note」で分析をしていますが、今は待遇を急激に削減しているわけですから、これらのバランスが崩れて辞める人が増えているのだと思います。

B:そうですね。それに、入社する前のイメージと実際の仕事内容とのギャップが大き過ぎます。

A:学生の頃は自動車保険の損害サービスの仕事なんて、全く知りませんでした……。東京海上のインターンシップでは海運とか宇宙とか、そういうグローバルで大きな保険ビジネスを体験したのですが、それはほんの一握りだけ。ほとんどは地方営業と損害サービスです。

やなぎ:学歴が高くてポテンシャルも高い人が多いだけに、優秀な頭脳の無駄使いだと思います。私自身は、「給料が高いのは、何か素晴らしい事業をやっているからだろう」と考えて入社をしましたが、その期待は見事に裏切られました。