食料危機を避けるため農産物を増産するべきなのに、農家数が激減して生産量を維持できない。そんな悪夢が現実味を帯びる中、農水省と自民党農林族は“人材難”に陥っている。特集『儲かる農業 堕ちたJA』(全17回)の#7では、人材の観点から農政の危機に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
農水省の改革機運は低下
旧来の昇進ルートが復活
日本の「食」は大丈夫なのか。食料安全保障の鍵を握る官僚や政治家の顔触れを見ると不安にならざるを得ない。実力者が引退し“人材の枯渇”に陥っているからだ。
農水省の枝元真徹事務次官は就任2年となる今夏に退任する見込みだ。鶏卵生産大手のアキタフーズによる贈収賄事件で減給処分を受けたが、農業の環境負荷低減を目指す「みどりの食料システム戦略(みどり戦略)」を推進する法案を成立させるなど実績も上げた。
農水省では2016年に次官に就任した奥原正明氏が農協改革に辣腕を振るった。人事の慣習にとらわれず技術系の職員を抜てきするなど実力主義を徹底した。だが、奥原氏退任後、改革の機運はしぼみ旧弊が復活した。次期次官人事でも、水産庁か林野庁の長官、あるいは官房長が就任するという旧来の昇進ルートが復活しそうだ。
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