黒田東彦日銀総裁約20年ぶりの円安で「量的・質的金融緩和」への批判が強まるが、インフレ期待醸成の効果や財政政策とのポリシーミックスの功罪を総括する良い機会だ(日銀の黒田東彦総裁) Photo:Bloomberg/gettyimages

「円安放置で物価上昇」
緩和維持への批判は正当か?

 ウクライナ侵攻などの影響で日本でも物価上昇圧力が高まる中で、金融緩和の継続に対する批判が強まっている。

 物価上昇の主因は、エネルギーや食糧などの輸入品価格上昇にあるのだが、日本銀行が緩和政策を維持しているために米国との金利差が広がり、円安を通じて物価上昇が加速、家計の購買力や企業の収益を圧迫しているという批判だ。

 負担増は、家計で言えば名目所得が固定されている年金や生活保護の受給者、企業で言えばコロナで深刻な影響を受けた飲食や宿泊、運輸といった内需サービスなどの事業者に集中しやすい点で、市場関係者だけでなく世論にも影響しやすい。

 足元では円安圧力はやや低下しているが、今年冬にかけては、欧州諸国による原油や天然ガスのロシア依存の本格的な見直しやウクライナによる穀物供給の減少の影響が顕在化するなどの要素があり、輸入インフレ圧力が少なくとも高止まる可能性は否定できない。日銀への批判も、根強く残存することが考えられる。

 来年春には黒田東彦総裁が任期を満了する状況でもあり、黒田総裁の下、続けられてきた「量的・質的金融緩和」の総括が検討されるべき良い機会ともいえる。