住友商事、豊田通商、伊藤忠商事……。商社が国内外の量子ベンチャー企業に出資、提携する動きが活発化している。商社は量子産業をどうビジネスに結び付けようとしているのか。特集『号砲! 量子レース』(全8回)の#3では、量子ベンチャーとの出資・提携を急ぐ商社の思惑を探った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
量子の国際会議前日に住友商事が開いた
海外ベンチャーと国内企業の交流会
7月12日、東京・大手町にある住友商事の「MIRAI LAB PALETTE」に、海外の複数の量子ベンチャーと国内大手企業の技術担当者など約30人が集まった。
「われわれが開発した装置は従来品よりも性能がいい」
「自社ビジネスのこんな用途に使える技術を探している」
参加者たちは、壇上で自社の取り組みや探し物を約1分間、英語でアピール。その後、会場のあちこちで参加者たちの“交流”が始まった。
イベントの仕掛人は、2021年3月に住友商事の社内で発足した「QXプロジェクト」の担当チーム。QXは量子トランスフォーメーションの意味である。
参加した海外ベンチャーは、翌日から始まる量子コンピューターの国際会議「Q2B Tokyo」のために来日した。イベントの目的は、未来を創る仲間づくりのためのコミュニケーションの場としているものの、もちろん住友商事の出資先の海外ベンチャーも交じっている。国内の大手企業に、住友商事が出資先を売り込む場でもあるのだ。
QXプロジェクトの旗振り役は、住友商事デジタル事業本部新事業投資部の寺部雅能テクノロジーディレクター。自動車部品大手デンソーの元技術者で、カナダD-Wave Systemsの量子アニーリングマシンを使い、工場内で部品などを運ぶ無人搬送車の効率化に取り組んだことでも知られる。
量子業界の有名人は、なぜデンソーから商社に転身したのか。商社はなぜ量子ベンチャーに出資し、量子産業をどうビジネスに結び付けていこうとしているのか。次ページでは総合商社の量子戦略をひもとく。