ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋しながら、毎日1ヵ国ずつ世界の国を紹介する。
南アフリカってどんな国?
南アフリカはアフリカ大陸の最南端に位置する国で、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、エスワティニ、レソトと国境を接しています。
標高1200m以上の高原が海岸近くまでせまり、平野は多くありません。
東部は海洋性の温帯で、西部は乾燥しています。テーブルマウンテンのあるケープタウンの周辺の海岸は地中海性気候で、ワインの生産が盛んです。
ケープタウンのボルダーズビーチには、ケープペンギンが生息しています。その北方のクランウィリアムは、この地域のみに自生するルイボスティーというハーブティーで有名です。
アパルトヘイトの歴史
17世紀半ばからオランダ、19世紀前半からはイギリスの植民地となりました。ダイヤモンドが発見され、入植したオランダ系(ボーア人)とイギリス系との間で対立が激化し、ボーア戦争へと発展しました。
1910年に、イギリス自治領の南アフリカ連邦として自治を獲得しました。白人優遇策が採られ、1948年、アパルトヘイト(人種隔離)法が制定されました。
これに対して、ANC(アフリカ民族会議)が武力闘争を行い、国際世論を味方につけ、ようやく1991年に撤廃されました。
1994年、全人種が参加する初めての総選挙が行われ、ANCを率いてきたネルソン・マンデラが大統領に選出されました。
世界最悪のジニ係数
マンデラは、すべての人種を尊重する「レインボー・ネイション」建設を宣言し、新政府はアフリカ系を優遇する企業を援助したり、初等教育や社会保障の充実を推進しました。
その結果、アフリカ系の企業幹部の比率が約4割に達するなどして、アフリカ系にも富裕層が誕生しました。
しかし、ヨーロッパ系とアフリカ系の間には、平均収入で5倍近い差があり、アフリカ系の失業率は3割にも上るといわれ、格差を示すジニ係数は世界で最悪に近いです。
とくに大都市の治安の悪さが深刻になっています。
ダイヤモンドや金など、豊富な鉱産資源
経済を支えてきたのは豊富な各種の鉱産資源です。ダイヤモンドのほか、金、クロム鉱、プラチナ、マンガン、バナジウムの生産量は世界一で、埋蔵量も世界上位に位置しています。
ほぼ中央部に位置するキンバリーでは、ダイヤモンドの露天掘りが19世紀半ばから行われた結果、直径約500m、最深部約200mという、人間が掘った世界最大の穴があります。
この国のダイヤモンドは地中かなり深く掘らなければなりません。周辺諸国から鉱山で働く移民が多数やってきますが、職を奪われるとして、移民の排斥が深刻になっています。
ラグビーが国民的スポーツ
国民統合にスポーツが寄与しています。最も盛んなスポーツはラグビーで、世界トップクラスの実力を誇っています。
1994年の民主化で国際大会に復帰した翌年、W杯の開催国となり、見事に初優勝を果たしました。2007年と2019年のW杯にも優勝しています。サッカーW杯も2010年にアフリカ大陸で初めて開催されました。
南アフリカ共和国
面積:121.9万㎢ 首都:プレトリア
人口:5697.9万 通貨:ランド
言語:バンツー諸語、英語(11の言語が公用語)
宗教:キリスト教86%
隣接:ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、エスワティニ、レソト
(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIA The World Factbook(2022年2月時点)を参照
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)