高年収&高収益 勝ち組企業大解剖!儲けの秘密と本当の待遇#6Photo:Feodora Chiosea/gettyimages

相場が不安定なときに注目されやすい「高利回り株」だが、高い配当利回りだけに注目するのは避けよう。利益が横ばいなのに増配を続けて、株主にだけ還元している会社もあり、そんな会社は長期では危険だからだ。人材への投資は中長期の成長に不可欠なのだ。そこで今回注目したのが、配当を年々増やしながら、同時に社員の年収も増やしている企業。特集『高年収&高収益 勝ち組企業大解剖!儲けの秘密と本当の待遇』(全18回)の#6では、配当増と株価上昇の一挙両得を狙える企業リストを発表する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

「高利回り」や「増配」など
配当狙い一辺倒は危険

「高利回りが下支えして、全体相場の急落局面でも下値が堅い」――。

 高配当株の魅力として一般的に使われるフレーズだが、実は必ずしも正しくない。日本企業も株主還元を重視するようになり、配当利回りの高い銘柄が増えてきたが、配当狙いでも「利回りの高さ」や「増配実績」だけで選ぶのは避けた方がいい。

 株式投資の利益には、値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)がある。受取配当金の合計よりも株価下落による損失の方が多いと、投資成績はマイナスになってしまうのだ。

 具体的に配当狙い一辺倒で損失を出したケースを見てみよう。

 日産自動車の配当利回りは、株価が下落したことで2019年初めに6%超まで上昇したが、19年の3月と4月に2度の下方修正を発表。20年3月期は無配に転落して、株価は2年半で3分の1程度まで下落した。

「連続増配」を続けている企業でも、それだけで飛び付くのは危険だ。「33年連続増配」見込みで、連続増配の日本最長記録を持つ花王の株価も18年10月の高値からは37%下落(22年9月30日時点)している。直近8四半期のうち7四半期が営業減益と苦戦が続いているからだ。

 仮に花王の株を18年10月に9000円で100株買って保有を継続したとしよう。現時点での受取配当金総額は4年間合計で5万3400円。一方で含み損は31万0200円である。

 この2社の教訓から学べることは、減益トレンドの企業とコストカットで利益を捻出している企業への配当狙いの投資は危険ということだ。

 とはいえ、高い利回りが魅力的なのも事実。低成長の日本では年収アップは難しいだけに、インフレ分を補う意味でも配当収入を確保したいという需要は強い。

 では、高利回りを享受でき、株価の上昇も狙える銘柄はどうやって選べばいいのだろうか。繰り返しになるが、選別のポイントは高利回りだけにとらわれないことだ。

 例えば、その一つの重要ポイントが人材への投資だ。売上高を伸ばし、株主だけでなく社員にも「年収アップ」という形で還元している企業でないと、持続的な成長は難しい。実際、日産自動車と花王の直近の平均年収は5年前比でわずかながら減少している。

 次ページでは複数の条件をクリアした上で、直近5年間で年収が増加した「株主にも社員にも還元している高配当株」を80銘柄一挙に紹介。

 ランキングには総合商社やメガバンク、21期連続で増配を見込むリース会社も登場。平均年収が1000万円を超えている企業も13社あり、上位企業は総じて年収が高いから、従業員のモチベーションも高いだろう。配当を増やしながら、5年間で平均年収を20%以上も増やした企業も14社ある。その上、上位36位までは配当利回りが4%を超えている。いわば守りにも攻めにも強い銘柄候補であり、不透明な相場の今こそ、ぜひチェックしてほしい。