地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)から「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、竹内薫氏による「訳者あとがき」の一部を特別に公開する。
タイムマシンで46億年を駆け抜ける
世界的に権威のある科学雑誌ネイチャーの生物学編集者ヘンリー・ジー(もともと科学者で専門は古生物学と進化生物学)による、その名のとおり『超圧縮 地球生物全史』である。
最初、原書を手にしたとき、「ずいぶんと無謀な試みだなぁ」と驚いた覚えがある。
なにしろ、約三八億年にわたる地球生命の誕生から絶滅(?)までをわずか二〇〇ページ(原書)で書くことなど、誰が考えても不可能な所業に思われたからだ。
悠久の時をめぐる歴史書ということで、ずいぶんと読み終えるのに時間がかかるにちがいないとも思った。
だが、世界的ノンフィクション作家であり、進化生物学者のジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』倉骨彰訳、草思社文庫)が推薦していることもあり、つらつらとページをめくりはじめたのである。
実際に読みはじめると、不思議なことに、目の前で生命が誕生し、進化し、絶滅するダイナミックな映像が流れていくような錯覚に陥り、どんどん先が読みたくなり、ペルム紀の大量絶滅のあたりからはぐんぐんと読書のスピードが加速し、気がついたらわずか数時間で読み終えていた。
まるでタイムマシンで四六億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った。
原書の文章表現は、科学書には珍しく文学的であり、巧みな比喩で生命の躍動を感じさせる。
引用・改変されている文学書も、ボルヘスの『砂の本』、オラフの『スターメイカー』、トルストイの『アンナ・カレーニナ』など幅広く、著者ジーの文学的素養の一端を垣間見ることができる。