「母親の言うとおりにやってきただけ」
「何も怖くない。ただ、死に対する恐怖はある」
以下が、『週刊ダイヤモンド』02年7月27日号に掲載されたインタビューの抜粋だ。
――1日に16時間、年間365日働くそうですね。
永守氏 朝5時50分に起きて、6時50分には会社にもう着いてますからね。夜、風呂でも、受話器を持たんでもしゃべれる電話で、部下にがあがあやっとる。
ぼくの予定はそもそも、土日から埋まっていく。日曜日52週のうち35週が社員研修会。残りの土日は日本電産とグループ各社の経営会議。空いているときは海外に出かける。
――なぜ、そんなに働くんですか。
永守氏 そういうもんだと思っているからね。ぼくは、母親の影響を大きく受けてるんです。人の何倍も働け、限りある時間を働き抜けば必ず成功する、と言われ続けてきたわけね。
だから、落ち込むこともない。これ以上できないと思えるほど働いているから、それでおかしくなったら自分のせいじゃない。何か天変地異とか、ね。何があっても、今日が底だ。明日はいい日だと思える。
――お母さん自身がそういう方だったんですか。

永守氏 そう。ぼくは母親を一番尊敬している。戦前小作人だったのに、働きづめに働いて土地を少しずつ買い、とうとう地元有数の地主になった。寝顔なんか一度もみたことがない。それに比べれば、ゼロから会社を大きくするなんて楽なことです。
人間、働き過ぎで早死にすることはない。母親は94まで生きましたから。死ぬ数日前に、「お前は海外によく行くけど、わしが死んだくらいで帰ってくるなよ、だいたい今、なんでここにいるんだ、会社に戻れ」と言われた。
――最期の最期まで叱咤激励された。
永守氏 最期の最期まで。母親の言う通りやってきたから、ここまできたわけ。ぼくがいつも言っているのは、人間の能力にそれほどの差はない、せいぜい5倍や。けど、意識の差は100倍ある。一流大学出身者なんかいらない、働くことに意識の高い人間こそ一番いいんだと。
――経営者の資質を持って生まれたと、おっしゃいましたね。
永守氏 経営者になるために生まれてきたんやないか、と思うね。小学校でも中学でも絶えずリーダーに推されてたし、今は毎日天性の仕事だと思っている。
――でも、生徒会長と経営者では、次元が違うでしょう。
永守氏 それは違う。死に対する恐怖があるかどうか、最期はそこやね。
ぼくは何も怖くない。ただ、死に対する恐怖はある。で、おそらく会社をつぶしたら自殺するでしょう。つぶしておいて、のこのこ世間さまに出ていく勇気はないですわな。死で償う。その死が怖いから、365日会社に行って、ああ今日もまだある、と思っているわけや。
――つまり、人生を賭けている。
永守氏 そうや。その緊張感が経営者としての条件でしょう。だいたい、今の日本は総理大臣から経営者まで、死に対する恐怖がなさすぎる。下手をしても、国会や株主総会で頭を下げれば済むと思っている。みなさん立派な能力をお持ちなんだけど、能力だけで経営はできない。
――永守さん自身に、学歴コンプレックスはないですね。