コトバを超えて「身体性で学ぶ」とは?

下向 生徒たちと接する中で、なかなか言葉や論理だけでは伝わりきらないもどかしさを感じることがあります。特に沖縄では言葉よりも体感覚的に学ぶことが長けている子が多いような気がしていて。

 廣瀬さんはラグビーを通じて身体性を持った学びを体現してきたと思うのですが、その経験を生徒たちの学びへ生かすヒントはありますか。

廣瀬 スポーツでは、頭で理解するだけでなく、アクションすることに重きを置いています。頭と身体をミックスして学ぶことが求められるんですよね。「ある程度理解したら実際にやってみよう」というセンスを、スポーツをしていきた人は持っているように思います。教育の現場でも、100%の理解を求めてから実践をするのではなく、ある程度わかったら身体を使って試してみることが必要なのかもしれませんね。

 とはいえ、僕は数学が大好きなロジカルな人間で、もともとは頭で理解するタイプなのですが(笑)

下向 そうなんですね! 私も同じです。証明問題のようにすっきりわり切れることが好きでした。頭で理解するタイプだった廣瀬さんがどう変化していったのですか?

廣瀬 ラグビーをしていると、論理や理論を超えて、「バシーンとぶち当たるワンプレイで流れが一気に変わる」といったことがあるんです。僕はラグビーの中で、論理や客観的な正しさみたいなことを超えた「答え」があることを学ぶことができました。

下向 『相談される力』を読んでいると、廣瀬さんは「見えないものを見ようとしている」と感じました。人間らしさでつながり合ってよい雰囲気を作ることなどが身体性を解き明かす鍵の一つなのかもしれませんね。

廣瀬 おもしろい視点ですね。たしかに、「今日はなんかいけそうだ」「このチームおもしろいことになるぞ!」と思う瞬間があるんです。論理を超えた“なんかええ感じ”がとても大事。例えば、普段無口な仲間が「やるぞ!」と声をあげた瞬間や、お互いにグーッと顔を見合っている様子などが見られた時はそんなことを感じます。

『相談される力』『21世紀の教育』